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10-4 伝えたい想い
気づくと、俺とマコトの様子を微笑ましい顔で見ている夫婦がいた。
女性の方は目尻に涙を浮かべて微笑んでいる。
そしてその隣には、穏やかな表情で見守る男性がいる。
この男性が、俺に手紙を出してくれたモリスン氏だろう。
俺の腕を離れて二人の元へと駆け出したマコトは、とても嬉しそうに奥方の方へと抱きつく。彼女もそれを受け止めている。その光景は本当の親子のようだ。
思えば、マコトは元の世界で両親と疎遠だったという。育ての祖父母とは良好な関係だったようだが、それでも親の愛情というものとは疎遠であった。
もしかしたら、この二人はマコトにとって得られなかった両親なのかもしれない。温かく大らかに見守られ、支えられ、そうした時間を過ごしてきたのかもしれない。
ならば、俺にとってもこの二人は両親だ。
「有り難うございます、マーサさん、モリスンさん。俺、本当に二人に助けられて…息子だって言ってもらえて、幸せでした」
「本当に、息子いないはずなのに嫁に出す気持ちよ。マコト、幸せになりなさいね。不幸な顔なんてしちゃだめよ。辛かったらいつでも、ここに帰ってきなさい。ここは貴方のお家よ」
「マーサさん!」
マーサ殿の発言に、俺は何も言えない。そして、深く心に留めおこう。彼がここに帰りたいと言い出さないように、俺は彼を幸せにしなければ。
いや、違うな。「俺も一緒に帰ってもいいかい?」と言えばいい。ここは彼の実家になったのだから、顔を見たい時もあるだろう。それを許せないような狭量な男にはなるまい。
モリスン氏が、穏やかに俺を見る。それに、俺は丁寧に深く頭を下げた。
「マコトを助けていただいた事、感謝いたします」
「いえ、王子。私たちも幸せな時間を過ごせました。だからこそ、彼の幸せを心から願います。大切になさってください」
「はい、必ず」
気が引き締まる。俺はマコトを抱き寄せて、強く二人に誓い、マコトに誓い、そして自身に誓いを立てた。
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