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13-4 シーグルが生まれた日

 マコトも落ち着いたと連絡が来て、俺は母に子を預けて向かった。そして、未だ横になっているマコトを見て、こみ上げる涙を止められなかった。  元気な様子で笑っている。だがその側にあるものは、あまりに大変な惨状だった。  どれほどの血を流したのか、シーツが真っ赤になっている。泣き腫らした目が赤く腫れている。声も多少枯れていて、憔悴の様子もまだ濃い。  駆け寄って、抱きしめた体は温かい。ちゃんと側にあるのだと確かめられて、俺はようやく安堵した。 「有り難う、マコト! 本当に…こんなに苦しい思いをさせてしまって…」 「あぁ、うん。でも今は平気だから、心配ないよ」  背中に手を添えて、俺を抱きしめるマコトの腕にいつものような力はない。それでも確かに触れるその感触を、俺は愛おしんだ。  子は、シーグルを名付けられてすくすくと育っている。  産まれて一週間ほどは、俺も執務を休んで三人の時間にした。  それで良く分かった。子育ては大変だ。数時間ごとに乳を欲しがり、終わったかと思えばおしめを取り替えて。後はほとんどが眠っている。 「マコト、疲れないか? 俺もやるから」  乳をやることはできないが、そのほかの事は俺もできる。実際、湯浴みは俺の仕事だ。マコトよりも手の大きい俺の方が安心するのか、シーグルは気持ちよさそうにしている。時々眠ってしまうくらいだ。 「大丈夫、今もけっこうやってもらってるしさ。おむつ替えなんて、ユーリスの方が上手いんじゃないか?」 「そうか?」  マコトは起きているシーグルの指を遊んでいる。指を握るのが好きなようで、手を伸ばして来る事もある。  柔らかなラグの上、揺りかごに揺られるシーグルを間に俺とマコトは座って、互いに笑っている。そんな午後が、今の俺の一番の幸福な時間だ。

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