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14-1 永久に共に

 シーグルが産まれて1ヶ月が経った。今日この日、俺達は本当に夫婦になる。  父から受け継いだローブを着た俺は、祭壇の前で手持ち無沙汰にしている。  とても落ち着かない。今日はマコトと共にここに来て分かれてから、まだ会っていない。母に引っ張られて連れて行かれてしまった。  なんだか、感慨深い。ここに立つまで、短かったはずなのに長く感じる。初めて知り合った国境の森が、遙か昔に感じる。  思えば俺は、あの時からマコトに惹かれていた。そして、どんどん引き込まれていった。  扉が開き、白いタキシードを着たマコトがモリスン氏と共にこちらへとゆっくり歩み寄る。  父の無いマコトにとって、やはりモリスン夫妻は両親なのだろう。遠慮されたが、説得をした。マコトの幸せは、二人も共に無ければならない。そう言って、お願いをした。  本当に養子縁組をしても良かったのに、それだけは断固として拒否されてしまった。そのような関係を改めて作らなくても、マコトは息子だと言われてはどうしようもない。  マコトは少し寂しそうにしていたが、書類の上ではなく、心が親子であればいいと言う二人に最後は頷いていた。それを、俺も確かに感じている。  モリスン氏からマコトを託される。俺はその手を確かに握り、司祭の前に立った。 「これより、ユーリス・ファン・フィアンサーユ殿下と、マコト・ツキシロの誓いの儀を行います」  城詰めの司祭がそのように言って、俺とマコトの結婚の儀を執り行っていく。神に祈り、祝福を願う。  俺も誓った。これから何があろうと、どのような困難があろうとも、マコトを離すことはない。俺の得た伴侶は、最高の伴侶だ。  緊張に手を握るマコトに返すように、俺もマコトの手を握る。瞳が触れあって、互いに柔らかく笑った。 「それでは、誓いの言葉を」  司祭の言葉に、俺は僅かに緊張する。  決まった言葉はない。この日の為に、伝えたい事や誓いたい事をあれこれ考えていた。だが、どれも上手くまとまらない。多くを語れば胡散臭く感じて、短すぎれば淡泊に思えた。  マコトを見つめ、その手を握る。そうすれば、本当に伝えたい気持ちが落ちてくる。  それで、いいのだろう。長い言葉などいらない。今この胸にある誓いを、ここで伝えればいい。 「マコト、俺はこの先も君だけを愛している。君と、君と共に作る家族を生涯愛し、慈しんでいく」  俺が伝えれば、マコトは目元を潤ませて頬を紅潮させる。感極まった様な彼の様子に、俺は笑いかけた。 「俺は…ユーリスの事が好きです。俺は本当に何も出来ないかもしれないけれど、ただひたすら愛してるって事だけ本当だから。この気持ちだけしか渡せないけれど、今後も一緒にいてくれるかな?」  マコトの気持ちが伝わってくる。それは深く、熱く、柔らかく俺の中に広がっていく。  勿論だ、俺は君を愛している。何も出来ないなんて、そんな事があるものか。俺をこんなにも幸福な気持ちにしてくれるのはマコトだけだ。シーグルの母親も、マコトだけだ。  俺も、俺の気持ちの全てを渡そう。俺の持てるものの全てで、君を愛し守っていこう。共に過ごせる時間の全てを、大切にしていこう。 「勿論、それで構わない。君を生涯幸せにする。この気持ちに嘘はないと誓って言える」 「ユーリス…」  今にも泣いてしまいそうなマコトが、満面の笑みで頷いてくれる。そこにすかさず、指輪が差し出された。

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