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第3話

ーーー巡り巡り出逢うよ、ふたりーー ーーーー隔たる刻も隔たる場も越え、ふたりーー ーー番となるべく出逢う、たったひとりの伴侶ー 前回のヒートで俺は、子を成さなかった。 つまり、次回のヒートは前回とは違うαに抱かれるという事だ。 来週末辺りにヒートが始まるだろうから、その直前に次回の相手が連れて来られる。 抱かれる以外にする事が無い俺は、筋トレくらいしか思いつかない。 本当に繁殖の為だけに、俺たちスーパーΩは保護という名の軟禁状態なのだ。 部屋にあるのは、ベッドとユニットバスと定期的に運ばれる食事と飲み物、生活用品だけ。 散髪は妊娠中のみ切って貰える。 羊のような扱いだ。 この施設に引き取られてから、勉強もさせてもらえなかった。 簡単な計算と簡単な漢字、鉛筆さえ持たせてもらえない俺たちは、小学校で途中まで習っていた内容を覚えているかも怪しい状態だ。 ヒートに入る前にαが来ても、難しい会話も楽しい会話も出来ないし、しない。 繁殖相手にとって、ただの人形なのだ。 情を移したところで、七日のヒート期間を過ごせば会う事もない。 いっそ、壁に穴開けて腰だけ出すようにして欲しいとも思う。 それくらい互いに相手に興味がないのだから、国も融通利かせろよ。 叶わない事を思ったところで仕方がないのだけれど、こんなんでも考えてないと狂ってしまいそうなくらいに孤独で屈辱的な生活をしている。 「No.002、今回のお相手はスーパーαだ。明日来館する。」 係員の無情な拷問宣告だ。 俺は今回、必ず妊娠させられるということだ。 妊娠すれば出産後まで暫くヒートは無いが、陣痛に耐えて出産したところで何も残らない、何も。 今更泣いたりしない、ただ自分は黙って犯され孕むだけの人形になればいい。 何人に抱かれたとか何人産んだかなんて考えない方が楽だ。 俺の精神は既にギリギリなのだろう。 壊れたところで、抱かれる事も孕む事も産む事も終わらない。 相手が『運命の番』でなければ、それでいい。 「No.002、柳本様だ。挨拶を。」 顔を上げ今回の相手と向き合い、ヒュッと息を飲む。 時間が止まったように、吸い込まれそうな青い海の色をした瞳に捕らえられてしまった。 背が高く、筋肉質だが細身の若くて見た事も無いような美丈夫。 彼は、彼こそが俺の『運命の番』だ。 俺は枯れた筈の涙を流しながら、ヨロヨロと運命に近づくと運命の胸に両手を添え、爪先立ちで唇にそっとキスをする。 「おいNo.002、何をしている。」 係員の咎める声がするが、俺と運命の耳には届かない。 俺は出会いたくなかった運命に出会い、歓喜し一気にヒートする。 運命は未だ一言も話さないが『運命の番』に気付き、俺と同じように歓喜しヒートを始めている事に喜ぶ。 係員は舌打ちだけして、部屋から出て行ってしまった。 無言で抱き締め合い、深い深いキスをして互いの存在を確認する。 俺の無くしつつあった、温かい感情と激しい情欲が戻って来る。 「会いたかった。」

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