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第6話
邪魔だ!邪魔だ!邪魔だ!
俺は目の前の隔たりのある頸に夢中で喰らいつく。
分厚い首輪があるのは理性じゃ分かっているが、本能が許さない。
天使、お前は俺のモノだ!!
噛み付くことが敵わず、αヒートによる性衝動は終わらない。
そのせいで天使の子宮を俺の子種でどれだけ満たしても、飢餓感がある。
繋がっている孔からは、ドロドロと天使と俺の混じり合った愛液の、入り切れなかった分が流れ出している。
俺はその匂いに更なる興奮と飢餓感を覚え、失神している天使の子宮を満たそうと俺のオスを奥に擦り付け、腰を打ち付ける。
ブチュリグチュリと濡れた音、パンパンと打つ乾いた音が室内を満たし、俺と天使が繋がっている事を現す。
だが、たった一つが繋がれない。
甘美な身体は抱けば抱くほど、快感をそして絶望を現実を俺に叩きつける。
それが分かっていても逆らえない本能のままに、俺の精を叩きつける事しか出来やしない。
俺は何度も天使を穿ちては種付け、俺の男性器を抜く間もなく、自らの意識が昏倒するまで天使を抱き続けた。
部屋中から香る天使のフェロモンに失っていた意識が浮上し、天使の様子を確かめる時間も惜しいままに腰を振りたくる。
どれくらい意識が飛んでいたのか、そんなものは関係ない。
俺の意識が有れば俺の意識が落ちるまで天使を只管に抱き、いつの間にか運ばれた食事をして水分を補給しては、また抱く。
終わらない獣の交尾に天使の身体は無事かどうかの確認も出来やしない。
天使の時々戻る意識が確認出来るのも、腕を突っ張り背を反らせて絶頂を迎える瞬間だけになって来た。
本能によって理性だけではなく、俺は正気すらも失ってしまいそうな衝動に抗う事も出来ず、愛しい天使の胎内に精を放つ。
俺の俺だけの子を孕めと、お前は俺のモノだと長い射精と共に頸に齧り付く。
ガリッガリッと、相変わらず頸に届く事の無い絶望に沈む。
ただ、天使の心と魂に届けと。
狂おしい情念に取り憑かれた俺は、何度も繰り返しては意識を失う。
何日経っただろうか、天使のヒートフェロモンも少しずつ落ち着き始め、俺たちは少しずつ正気を取り戻し、獣の交尾から愛撫を含めたSEXにシフトする。
長い射精の後に男性器を孔から抜く余裕も出て、俺は俺たちは漸く直接に言葉を交わす。
「お前の名は?」
最初に知りたいのはコレだった。
「俺、俺の名はたかし。さがたかし。でも、此処ではただのNo.002だ。」
天使にちゃんとした名前がある事にも驚く。
「字はどう書く?」
勉学を修めてないのか、天使、たかしは云々と首を傾げる。
「紙とペンがない。それに覚えてるかも怪しいんだ。」
会話を進める度に、無機物としての扱いが明白になる。
俺はたかしの胎内から抜け出て、自分のジャケットの内ポケットから紙とペンを取り出して渡す。
たかしは受け取り、記憶の中から自らの名前を取り出そうと書いては間違えた文字を消してを繰り返す。
その字の残骸から予測してたかしのペンを奪い、空いたスペースに砂賀隆と書き記し、その隣に柳本創一郎と振り仮名付きで書く。
隆はそれを見て小さなぽってりとした唇で俺の名を紡ぐ。
その響きは優しく、そして絶望が滲んでいる。
互いの置かれている立場の違い、此処を俺が出てしまえば会う事もない。
苦しさに互いの姿を見て、また抱き合う。
「俺は創一郎さんの子供を確実に成している。」
生まれたら大切に育ててくれ、と隆は続ける。
もしもスーパーΩと育った場合、此処に引き取られる事を考えると、生まれてくる子供をいかにして守るかを考えなくてはいけない。
やはり、合法では時間がかかり過ぎそうだ。
俺は非合法でアシのつかない方法で、早急にこの機関を潰して隆を連れ出そうと決意する。
今は先ず、確実に孕ませる必要がある。
妊娠すれば出産後のヒートまで、隆を誰にも抱かせずに済む。
俺の意図を理解出来ないだろう、目の前の愛しい存在は「創一郎」と、噛み締めるように小さく名前を紡ぐ。
俺はスーパーαだ。
何をしてでもこの愛しい番、隆を手に入れる。
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