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第9話
創一郎と番になるまで、首輪を着けておく必要がある。
戸籍を作るから、苗字は何にするか聞かれる。
「俺、柳本がいい!」
よく分からないけど、俺が一番好きな苗字を言う。
「それは隆の戸籍が出来た直後に、婚姻届を提出するから、とりあえずの苗字だ。砂賀のままだと、施設に捕まえられる。」
俺は説明されても難しい事は分からず首を傾げるが、砂賀がマズい事は分かったので了承の意味で首肯する。
「じゃあ、もう鈴木で」
ハハハと、創一郎が笑う。
「立派などこにでも居る名前だ。上出来、上出来。」
創一郎に頭を撫でられるのは大好きだ。
創一郎と離れたくないけど、でも、俺はココに居ていいのかな?
行く場所無いけど長く住んだ、ベッドくらいしか置かれてなかった部屋と違ってココはソファやテレビ、色んな本によく知らない物まである。
それら全てから創一郎の匂いがする。
俺が一番好きなな匂い。
でも、柳本じゃない苗字って言われたし、でも迎えに来たって言ってくれたし、どうなんだろう?
俺は聞いてもいいのかも、分からない。
創一郎も何か考え中みたいだ。
人差し指を口元に持っていって、反対の手で肘を抱える姿は本当にかっこいい。
創一郎をジッと見つめる。
「隆、ジッと見つめてどうした?」
俺は聞いてもいいのかな?と、左右に迷う視線を流した後に勇気を持って聞く。
「お、俺はいつまでココに居ていいの?」
創一郎の目が点になる。
俺は変な事を聞いたのだろうか?
「そうか、さっきの説明じゃ分かりにくかったんだな。俺は今、隆を嫁にする準備をしている。番だけじゃなく、結婚してくれるか?」
創一郎は今度は俺が分かるように説明してくれた。
「創一郎、俺と結婚してくれるの?」
「あれだけ身体で話し合ったのに、俺から逃げる気だったのか?」
「そ、そんな事無い!!け、結婚するっ!俺、創一郎と結婚したい」
言いながら、創一郎の首に腕を回して抱き着く。
「ここは隆と俺と腹の子の家のつもりで買ったんだ、結婚してくれないと俺が困る。」
苦く笑いながら俺にキスをする。
俺は隆として生きていいと許されたのだと、やっと実感する。
もう、『No.002』じゃないのだと。
「もう寝ろ、今日は隆も疲れただろ?腹の子も疲れた筈だ。おやすみ。」
「疲れたけど、もっと創一郎と居たい。」
「俺はいつでもお前の隣に居るよ。もう、手離す気は無い。だから俺の腕の中で寝ろ。」
俺は安心して、無理して起きてるのをやめた。
優しい海の色が俺を見つめてるのが分かっているから。
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