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第11話
毎日、漢字ドリルと算数ドリルな俺。
創一郎の名前を漸く漢字で書けるようになった。
嬉しい。
ページの端にコッソリと柳本隆と書いてみる。
それを眺めてニヤけてると、背後から声がする。
「柳本隆か。」
バッとドリルを胸の前に隠し、後ろを振り返る。
「名前、完璧に書けるようになったみたいだし、明日市役所で結婚するか?」
ニヤニヤと揶揄う素振りをしながらも、少し耳の赤い創一郎が居る。
「なんで結婚が市役所なんだよ?結婚式場だろ?」
俺は前から思っていた疑問を口にする。
「か、、可愛いな、隆。そうか、結婚と結婚式が別だと知らないんだな。」
俺は真っ赤になって、結婚と結婚式の違いを聞いている。
知らなかったとはいえ、恥ずかしい!!
「あ、明日結婚する。」
一言だけ言って、俺はピューっと寝室に逃げ込んだ。
いや、だって俺年齢はもうすぐ二十三歳だけど、世間の事は十歳で止まってるし、知らない事ばかりなんだよっ!!
知らない誰かに言い訳をした。
俺、創一郎にめんどくさいとか思われてない!?
俺は確かめるべく、ソーっとドアの隙間から創一郎の居るリビングを覗き込む。
あれ?居ない!?
俺は慌ててリビングに入り、創一郎を探す。
え?え?さっきまで居たのに、なんで?!
俺は途端に寂しくなり寝室に戻り、創一郎の匂いのする物を集める。
ベッドの周りを創一郎で固めて、真ん中に鎮座する。
もう、寝る。
俺は創一郎を愛してるのに、重荷にしかなれないのだろうか?
嫌な思考にどんどん沈む。
嫌な気持ちは募り、眠るなんて出来ない。
グズグズと考えていたら、玄関から声がする。
創一郎が帰って来た。
俺は素直になれず、ベッドで更にグズグズしてしまう。
カチャリと背後で寝室のドアが鳴る。
「やべぇ、隆が天使過ぎる」
頰に熱が集まる。
思いがけず、創一郎の気持ちを知ってしまった。
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