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第13話

ズキンズキンズキン 「ゔっぐぅぅっ、腹痛い。陣痛来た。」 俺はこれでも出産まではベテランだ。 この子で四人目だ。 この感じだと、まだ出て来るまで時間がある。 「創一郎、病院に陣痛来たって、連絡入れて。」 俺は痛みが引いているうちに、入院に必要な物を準備する。 「隆、病院がジャスミンオイルのトリートメントするかって聞いてる。」 「それ、何だ?痛くないならする。」 色々済ませて、創一郎と車で病院に向かう。 俺は痛いけど、落ち着いている。 慣れてるからな。 創一郎にとっては嫁の初めての出産だ。 どんな時も余裕あるのに、今とんでもなくソワソワしている。 お前、父親の心構え読み込んでたろ? とは、言わない。 落ち着かない程、楽しみにしてくれているのを知っているからだ。 迎え棒だとかなんとか言って欲望にも忠実だったが、俺も気持ち良かったから何も言うまい。 出産後の子育ては俺も未知との遭遇だ。 もちろん、創一郎にとっても初体験だ。 腹の外で子供に会うのは初めてだ。 今までは産まれた子の性別も顔も見せてもらえなかった。 けれど、この子は会う事も育てる事も、一緒に遊ぶ事も出来る。 創一郎がスーパーαだろうが、スーパーΩだろうが、国の自由にはさせないと約束してくれた。 俺を助けてくれたくらいだ、創一郎は約束なんてしなくても信じられる。 駄菓子菓子、今は陣痛がシリアスになんかさせてくれない。 「ぅゔっ、ふぅーふぅー」 呼吸で痛みを逸らすが、簡単に逸れない。 創一郎はオロオロしている。 三時間後、俺は分娩台にいる。 創一郎も付き添っている。 「柳本さん、ヒッヒッフーに呼吸を合わせて!!」 「ヒッ!ヒッ!フーッ!!」 これは創一郎だ。 お前じゃない、俺が合わせるんだ。 「創一郎、俺、産むからな!お前の子産むからな!!目ぇ離すんじゃねえぞ、こらぁァァァァアアア!!!ヒッヒッフーゥッ!!」 「お、おう?」 「返事が小さいぃぃいっ!!ヒッヒッフーゥッ!!」 「おうっ!」 「痛えぇぇぇえっ!!ヒッヒッフーゥッ!」 「柳本さん、頭見えて来ましたよ!ヒッヒッフー」 「テメェ!創一郎、代わりに産めぇえっ!!いや、やっぱ代わるなァァァァアアアっ!ヒッヒッフーゥッ!!」 「柳本さん、肩が出たら直ぐですからね!ヒッヒッフー」 「創一郎、愛してるかっ!?こんな俺でも、愛してるかっ!?ヒッヒッフーゥッ!!」 「あ、当たり前だ!隆、愛してる!!ヒッ!ヒッ!フーッ!!」 「俺もだ、バカヤロォォォォオッ!!ヒッヒッフーゥッ!!」 「ピッギャアァァァァアアアン!」 「柳本さん、おめでとうございます!立派な男の子ですよ!!」 「はぁぁ、疲れた。俺の俺の赤ちゃんっ!!俺の赤ちゃんどこォォォオッ!!」 無事出産したものの、今まで抱かせてもらえなかったトラウマは大きく、俺の腕に赤ちゃんが来るまでパニックになってしまった。 胎盤を除き、漸く俺の腕に赤ちゃんが抱かされる。 「俺の、俺の赤ちゃんっ!!やっと抱けた!生まれてくれてありがとっ、、」 創一郎の反応を見る余裕なんて無かった。 俺は疲れて寝た。

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