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第2話 物音
体育館は、校舎から渡り廊下を挟んでの少し離れた場所にある。
購買や学食とは反対に位置している為か、あまり休憩中にやってくる生徒は居ない。
ましてや『学園七不思議』とかいう訳の分からない噂のある体育館に誰が好んでやって来るものか。
好きでもないが、来なくてはならない事情の生徒も居る訳だが。
もちろんそれは、優太の様な運の悪い生徒位のものだ。
優太は体育館のドアを少し開けて中に入ると、トコトコ歩いて体育倉庫へと足を向けた。
「わぁ~広い。なんか得した気分かも。ヘヘヘッ」
優太は頬を綻ばせて呟いた。
体育館の広い空間を今自分が独り占めしていると思うと、何だか得をした気分になる。
貧乏くじを引かされたというのに全くお気楽というか、直ぐに気にしなくなるという性格が優太の良いところだろう。
けれど地味に暮らす優太を理解してくれる相手は、家族か数少ない同胞しかいないのだ。
優太は平凡をバカ正直に体現していると言っても過言では無かった。
平凡なものだから、この後の展開も平凡極まり無いことになる…それは間違いだった。
後々そんな事になるとは、優太はこれっぽっちも思っていなかった。
ガタッ
カタンッ
「?」
体育会に響く微かな物音に、優太は小首を傾げた。
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