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第4話 お子様にはまだ早い
どれ位そうしていたのか?
実際には大した時間ではなかったが、優太の中では相当な時間が経過したように体感していた。
目の前では男女が体を重ね合わせている。
果てた女が荒い呼吸を繰り返し、意識も怪しいほどの脱力ぶり。
男は服も乱さず仕事は終わったと言わんばかりに「ふぅっ」と爽やかに息を吐く。
すると、男が顔を上げた。
バチッと音がするほどに目が合ってしまう。
「あ…」
優太はアホな表情で口を開いた。
優太は自分で言うのもなんだが、正直地味だ。
顔は不細工ではないと自分では思っている。
不細工とは言われたことがないからだ。
けれど、顔の作りは何の変鉄もない。
よくボヤッとしてる、とは言われるがよく分からない例えだ。
染めたことのない黒髪に天使の輪が輝いていて、サラサラしている以外自分でもアピールポイントは無い。
頭の出来は正直悪い、と思う。
思うというのは、教科毎にバランスが悪いからだ。
そして、悪い科目が多いのが理由だ。
スポーツも普通にこなせるものの、飛び抜けて上手くはなく、力の必要な物と泳ぐ系統は苦手と言えた。
つまり、どこからどう見ても考えても平凡で、この人生で表舞台で輝いたことは一度たりともないと言える。
強いて言えば保育所の発表会でやった『村人その2』で、自分だけにスポットライトが当たり、その時にいつもは出ない大きな声が出て、両親や先生から沢山誉められた時くらいだろうか?
何故急にこんなことを思ったかというと、目の前の相手に理由はあった。
グッタリとして顔の見えない女ではなく、相手の男の方が原因だった。
男の顔と名前は、学校という狭い世間でさえも知らないことだらけの優太でも『嫌でも耳に目に入ってしまう相手』だったからだ。
甘凱永久(あまがい とわ)。
優太と同じ二年生で、隣のクラスの学校一有名な男だった。
「…えっと…」
我に返った優太は、なんとかしようと口を動かしたものの実際にはパクパクと開いたり閉じたりしただけだった。
顔を真っ赤にして棒立ちの優太に、甘凱は爽やかに笑顔を向けた。
「お子様にはまだ早い」
そう言ってドアを閉めてしまった。
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