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第8話 気力ゼロ
フラフラと顔色を悪くして教室へと戻ってきた優太を見て、食事を食べ終えてパックジュースをのんびり飲んでいた大田がギョッとした。
「ひ、日生っ…、どうしたの⁉大丈夫⁉」
顔色悪いのにプリプリと怒っているのだから、どうしたのかと心配にもなる。
「どうしたも何も、って、甘凱の、あぅー…なんでもない」
勢いで喋り出そうとした優太だったが、ハタと思いとどまる。
あんな破廉恥な行為を幾ら腹立ったとはいえ暴露するなど、プライバシーの侵害になるのではなかろうか?
「甘凱?って、あの甘凱がどうかしたの⁉」
思わず口走ってしまった名前に、大田が食いついた。
普段、地味に暮らす優太と大田。
大田も普段全く縁の無い名前に、少し興奮しているのが分かる。
それだけ甘凱のネームバリューは凄いのだ。
「い、いや…。ただ近くで見かけただけ」
そう言うと大田は「なーんだ」と少し残念そうにした。
「でも近くで見るなんて、なかなか無いもんね!どうだった⁉」
大田が小さな瞳をキラキラさせながら、訊いてくるのを優太はウッと一瞬息を詰める。
「ど…どうって…」
脳裏には、あの俺様的な甘凱のイヤミな程に整った顔が甦る。
「…イケメンだった」
性格は絶対に認めたくない‼が、顔は文句無く…。
優太は項垂れながら、そう答えた。
そして、ガックリと肩を落とす優太だった。
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