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第9話 平凡は今日も

あの優太にとっての大事件があった日。 頼まれていた体育の準備も結局出来なくて、チャイムが鳴るギリギリで慌てて倉庫から大田やクラスメイトに手伝ってもらい、なんとか間に合った。 放課後、部活も出てササッと用事を済ませると夢遊病者の様に帰宅した。 その後も悶々と過ごし、夜ベッドでも甘凱と女子の絡み合った姿が脳裏に焼き付いて離れず。 結局、寝たのか寝てないのか脳が休まないままに翌朝を迎えていた。 会ったらどんな顔をしたらいいのか…と、警戒していた甘凱とは顔を会わせることはなく肩透かしを食らったら形になっていた。 「うん、そうだ。気にしても仕方ないよな!うんうん。そうだそうだ」 地味で目立たない自分と、あの甘凱に接点など端からないのだから。 偶然会うことも少ないのだから、意識して避けていれば遭遇の確率は低くなる。 「なるべく会わないように気をつけよう…っと」 優太はこうして、数日。 変わりの無い日常を過ごしていた。 そして、それから四日経っての放課後。 「ちょっと、日生‼」 優太が鞄に教科書を詰め込みノロノロと支度をしていると、クラスメイトの女子が勢いよくやって来た。 「な、何?」 「ごめんけど、ゴミ捨てお願い‼バイト遅れちゃうの‼ じゃ、頼んだからね!」 こちらは返事もしていないというのに、一方的に捲し立てて自分はさっさとドアから風のごとく帰って行ってしまった。 「えっ、ちょっと…‼」 途方に暮れる優太に、同情の視線が集まる。 「あらら。また頼まれごとしてるし」 「日生は本当にどんくさいな~相変わらず」 「日生‼ たまには断れよ!」 今日も今日とて、先生と女子からはドンドン頼まれごとを押しつけられる優太に、男子達は呆れ顔を見せている。 かくいう彼等もよく頼み事をしているのだから、優太にとっては同じ穴の狢だった。

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