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第10話 溜め息ばかり
「俺が代わってやろうか?」
そんな優太に、クラスメイトが声をかけてくれた。けれど、頼まれたのは自分で断れなかったのも自分だ。
それなのに、関係の無い彼に頼むのは違う気がした。
「いいよ。高野(こうの)くん部活あるだろ?でも、ありがと」
「そうか?…じゃ、頼むな」
優太は、高野に頷いて見せた。
高野は人当たりの良いクラスメイトだ。
どんくさい優太にもこうして気づかって、声をかけてくれる。
だから普段そんなに絡むことはないが、優太の中では『いい人』認定がされている。
何かあれば、いつでも助けになりたいとは思っているのだ。
「今度は断れよ!」
高野は鞄を手にしてそう言うと、急いで部活へと向かって教室を出ていった。
そんな高野を優太は見送ると、小さく溜め息をついた。
自分では特別どんくさいとは思っていない。
けれど周りからするとそう見られる様で、高校生になり二年に進級しても立場は変わらなかった。
いじめではない。
バカにされたり、無視されたりは無いのだが。
それから教室の隅にあるゴミ箱を持ち上げて、ゴミの集積所へと向かった。
ゴミ捨ては日直の当番になっている。
優太は日直でもないのによく頼まれてしまうので、二年生の春にして何度目になるだろうか。
自分の掃除区域を終えた後に、教室へ鞄を取りに来たタイミングでいつも声を掛けられていた。
その為、部活に顔を出すのが他の生徒より断然遅くなっていた。
とはいえ部員は元々少なく、まともに出ているのは三年生の部長と二年で副部長を務める別のクラスの男子生徒と自分くらいなのだが…。
「よいしょ、っと」
女子と大差ない身長の優太は、ゴミ箱に翻弄されつつ歩く。
リサイクルの為に、燃えるゴミと燃えないゴミに分けてあるゴミ箱は通常よりも大きい。
女子だと友だちに頼んで二人で運んでいるのだが、男である優太は一応プライドもある。
それに大田は部活へ行ってしまったので、唯一の頼る相手も居ない。
大きめのゴミ箱を必死で運ぶ。
カンコンカンコン足に当たってしまい、歩きにくいことこの上ない。
「オレだってやることあるのに…」
ブツブツと言いながら、ゴミ箱を運ぶ。
途中、休憩を挟みつつ進む。
階段を下りて廊下を進み、裏手へ繋がるドアを潜り抜けた。
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