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第11話 どんくささを体現してます
「うわっ‼」
思ったよりも強い風が吹いて、優太は目にかかる前髪を手で払う。
「なんか風が凄いなぁ」
不規則に吹き付ける風が行く手を邪魔するが、なんとか集積所に持って行きゴミを捨てることに成功した。
「ゴミ袋、ゴミ袋っと」
ゴミの入った袋を捨てると、代わりに新しいゴミ袋をセットしなければならない。
集積所にはゴミ袋が設置してあり、当番は捨てた分ゴミ袋を新しくセットしなければならなかった。
優太がゴミ袋をセットしようとしてバサバサッと広げた時だった、またも突風が吹きゴミ袋が風を孕んで大きく膨らむと、そのまま勢いよく空へと舞い上がってしまった。
「うわあっ‼」
ゴミ袋が青い空へと舞ったと思ったら、急降下。
「ちょ、待ってっ‼」
それから地面へ着いたと思えば、別の風に拐われて遠くへと飛ばされていく。
「止まって、ちょっと、困るーッ‼」
地面を這っていく様は、何かの生き物の様だ。
優太は自分なりの早さで、ゴミ袋を追いかけた。
気持ちは焦るが、足は遅い。
端から見ればコントの様。まさに、どんくささを絵に描いたよう。
そんなことは露にも思わず、優太は懸命にゴミ袋を追いかけるのだった。
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