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第12話 遭遇したくない相手
ゴミ袋は風の力を借りて、気がつけば校舎裏手の放課後は使われていない空き教室の並ぶ別棟へと飛んでいた。
「ちょ、こら待て‼」
漸く吹き溜りになっている場所にゴミ袋を追い詰めた。
ゴミ袋は桜の花弁や小さな葉っぱに囲まれており、その様子を見ながら、優太は喋りもしない相手に説教をする。
「いい加減にしろよ!こんな所まで来て‼」
ひとり言が静かな場所に響く。
「これで二回目なんだけど!」
先週も同じ事をしていた優太は自分の失敗を誤魔化す様に、ひとりコントを始める。
拾い上げたゴミ袋に「メッ‼‼」と冗談めかして叱りつけると、ガタンッと音がした。
ビクッと肩を揺らして顔を上げた優太は、次の瞬間には蛇に睨まれた蛙状態になってしまった。
そこには、一番避けて通りたかった相手、甘凱が居たからだ。
驚きすぎて、優太の手からは漸く捕まえたゴミ袋が地面へと落ちた。
「…お前」
優太を見た甘凱が、ユラリと全貌を現した。
不機嫌そうに眉を寄せている。
甘凱は案の定というか、当然の様にお楽しみの最中だったらしい。
ベルトが外されて、シャツがズボンからはみ出している。
ここからは見えないが、一瞬女子の影を見たからだ。
なにより、その色気たっぷりの表情が全てを物語っていた。
吹き溜りの直ぐ横の建物の物陰で、女子とエッチをしていたらしい。
天気も良いので屋外でも問題ないらしい。
放課後、特別棟だけの離れたこんな場所に来る人間は皆無。
来るとしたらごみ捨て当番が来るだけ。
それも、集積所からも随分と離れているのだが。
そこへ優太はやって来たという訳だ。
「この前の…」
甘凱が、益々不機嫌そうに表情を動かす。
「さっき二度目とか言ってたが、お前が邪魔し」
「ひいっ‼ ご、ごめんなさぁーいっ‼」
甘凱が言い終わるよりも先に、優太は謝ると全力でその場を走り去ったのだった。
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