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第13話 悩む平凡
会いたくない相手にまさかの遭遇を果たした優太は、教室へと辿り着くと自分の机に突っ伏した。
普段走らないのに一気に階段も上りきったせいで、呼吸も乱れている。
思考も回らず、甘凱の整いすぎた顔だけがグルグルと頭を犯していく。
「何で会っちゃったんだろ~っ?」
あれだけ意識して避けていたのに、あんな場所に居るなんて予想外だった。
確かに人が来ないから良いのかもしれないが、あの場所は屋外といっても過言ではない。
そんなスリルある場所で事に及ぶとは…。
「やっぱりエッチなことしてたんだよな…?」
一瞬だけ見えた女子だが、前回の相手とは髪形が違っていた様だった。
前回の女子より、髪が長かったような…。
「えっ、もしかして甘凱のヤツ浮気してるのか?」
ひとり教室でボソボソと呟く。
「はぁっ…信じられない。顔が良いからって」
いや。世の中顔が一番だろう。
そして甘凱は、顔だけでなく他の分野も秀でているのだから質が悪い。
「うう…。神様って本当に不公平だな…」
優太は机に頬を付けたまま目を閉じる。
平凡な人生。
まだ十代だが、自分には分かる。
この先も特に変わることの無い普通の一生を歩いていく。
甘凱をはじめ、華やかな人たちの陰で脇役としての人生を送るに違いない。
けれど大きな物語では脇役でも、自分の物語では主役なのだから。
精一杯楽しんで生きよう。
たかだか甘凱と遭遇しただけの優太だが、なんだか哲学的な考えに浸ってしまっていた。
甘凱とのたった二回程の遭遇で、自分との差をそれだけ思い知ったのだ。
暫く気持ちを落ち着けた優太は「さて、そろそろ部活に向かおうか」と体を起こした。
それから鞄を手にした時、そこに付けていたお守りが目に入る。
それをキュッと手に握る。
「うぅっ神様ぁ…。オレにも何か良いことがありますように。あ、何かくれても嬉しいです‼」
そんな風に願いを込めた。
この願いを後々、神様が叶えてくれるとは。
そして波瀾の高校生活が幕を開けるとは、この時の優太は思いもしないのだった。
翌朝。
クラスメイトからゴミ箱が無いとの苦情を受けて、集積所へ取りに、朝から階段を往復させられた優太なのだった。
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