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第16話 一度あることは二度、三度
甘凱の表情を見て、優太はブルリと身を震わせる。
これは相当不機嫌に違いなかったからだ。
いつものあの王子様然とした甘凱の面影は薄れ、眉間に皺を寄せて優太を見下ろす視線は悪魔の様だ。
それも仕方ないとは思う。
優太は甘凱と偶然とはいえ、ここ最近とんでもない場面で遭遇を果たしていた。
二回目の時でも甘凱に嫌な顔をされていたのだから、三回目ともなると怒りが湧いてくるというものだ。
だけれど、今回は別にしても過去の二回は甘凱に非がある。
どちらも校内でエッチなことをしていたのだから。
思い出して少し頬を赤らめる優太だったが、それどころでは無かった。
「おい、お前。俺に対しての仕打ち、何度目だ?」
いつもの甘くて爽やかな声は何処へ行ったのか。
甘さは残っているものの、ドスの効いた声は優太を黙らせるには文句なく効果覿面だった。
「こんな邪魔になるところに、よくも身を隠してたな」
「え、や、その…えと、隠しては…」
「ここ最近、俺に纏わり着いて来るけど。何?」
「いや。ちが、違う。纏わり着いては…」
纏わりついては一切無い。
偶然も偶然で、それを説明しようとするが言葉が上手く出てこない。
優太は、甘凱の迫力に完璧に負けていた。
たじろぎながらモゴモゴ喋る優太に、甘凱は形の良い眉毛をピクッと持ち上げた。
「ったく、はっきり喋れよ」
優太の喋りに嫌気が差したのか、甘凱は呆れた口調で体を起こした。
「あ」
気がつけば倒れた時のまま二人は喋っていたようで、優太はあまりの近さに今更ながらドキリと心臓が高鳴った。
一年生のあの頃。
甘凱に初めて会った時のドキドキが、一瞬だけ甦ってしまった。
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