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第18話 悪魔の手

「痛いっ、痛いーッ‼ううっ、何するんだよっ⁉」 「返事しないからだろ。って、お前…怪我酷いじゃん」 甘凱がいきなり怪我をしている方の足を無理に曲げてきた。 傷口を確認しようとしたらしいが、その痛さに叫んだ優太は思わず文句を言う。 見たら分かるだろうに、今更な事を言われて涙目で傷口を見る。 庇って歩いていたので少し落ち着いた様子を見せていた傷口が甘凱のお陰で開いたらしく、再び血を流し始めていた。 「痛いから離せよ‼」 急いで足を奪い返す。 そして膝をゆっくり伸ばすと、痛みも少し軽減される。 酷い怪我だと分かるなら、触らないで貰いたい。 というか、今すぐ解放して欲しい。 とにかく傷口を洗いたいし、至近距離から受ける甘凱の圧が余計に悪化を招きそうだ。 実際、甘凱とぶつかったせいで尻も痛いという状態に、優太は眉をしんなりさせる。 「おい」 「…な、何⁉」 痛みに耐えながら立ち上がろうとした優太の前に、綺麗な長い指が差し出された。 甘凱が相変わらずの不機嫌さではあるが、こちらに向けて手を差し出していることに驚く。 「あ?何って、分かんねぇのかよ。掴まれ」 どうやら優太が立ち上がりやすいようにと、手を差し出してくれたらしい。 鬼の撹乱か? 優太は甘凱の親切を疑いの目で見た。 「…いや、いらない」 「はぁっ⁉いらないとか、ふざけんな」 辞退すると、何故か怒り出す。 何故自分が怒られるのか謎の優太は、再び縮こまる。 「俺様が手を差し出してやってんだから、掴まれ。じゃねぇと、差し出した俺がバカみたいだろうが」 甘凱の言う理由に呆れてしまう。 別に頼んでもないし、差し出した手を自分が掴まなくても誰も甘凱をバカみたいとは思わない。 第一、ここには自分と甘凱しか居ないのだ。 だから、無理に手を差し出しては欲しくない。 引っ込めて、ここを立ち去ってくれて構わない。 優太はプイッと顔を背けて、手を拒否した。

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