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第19話 酷い言葉
顔を背けたので甘凱がどんな顔をしているのかは、分からない。が、良い顔はしていないだろう。
すると急に頭部をガッチリと掴まれて、無理矢理顔の方向を変えられる。
「ちょっ、痛いっ、痛い~‼」
只でさえ痛い足と戦っているのに、容赦ない握力で頭を鷲掴みにされて、優太は涙目で訴えた。
思っていたよりも手が大きいらしい甘凱は、優太の頭など意図も簡単に捕らえて離さない。
「シカトすんな。こっち見ろ平凡ヤロウ」
「ぐっ…酷っ」
平凡に平凡と言うほど残酷なことはない。
言われなくとも平凡な自分が一番知っている。
それを美の神ミューズが与えたもうた様な造形をしたイケメンに、改めて言われる事ほど情けなく泣きたくなる。
イケメンには一生分からない感情だろう。
「こんな酷い怪我してるのに何処行くんだ。保健室はあっちだろうが」
甘凱が顔をそちらへと向けながら問いかけてきた。
その保健室が不在でどうしようもなく、今こうして何とかここまでやって来たのだ。
傷口を洗うのに求めている水道は、あと30メートルほど先にある。
とりあえず傷口を洗いたい。
転んだ時に小さな砂利や砂が傷口に入っているらしく、痛い。
バイ菌が入ってもいけない。
それから落ち着いたら保健室前に戻り、保険医が帰ってくるのを待てば良いと考えていた。
「えっと…保健室の先生居ないから、傷口洗おうかと」
「…今、居ないのか。ふぅ~ん」
聞いておきながら、さして興味無さそうにする甘凱だったが、何を思ったのか優太の真横に膝まづいた。
そして、小さな声で囁くように言った。
「大人しくしとけよ、平凡」
「ふぇっ⁉」
次の瞬間、優太の視界はあっという間に高い場所へと誘われた。
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