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第30話 バカにしている?気がする

口元に手を当てていても、目元が完全にバカにしているのが分かる。 コイツいちいち大袈裟なんだよ、たかがそれくらいの傷で~とか思っているに違いない。 優太はムムッと眉間に皺を寄せつつも、自分を落ち着かせた。 いやいや。 この甘凱が通りかかって保健室まで連れてきてくれたのは事実。 その前に酷いことをされたのは内心恨んではいるが、足は本当に痛かったし出血が酷かったから尚更助かったのだ。 腹を立てるのはやめよう。 それから、よっこらせと立ち上がる。 痛みはあるものの、テープで固定されている分軽減されていた。 これなら歩けそうだ。 優太は、「失礼しました」と真鍋に改めてお辞儀をした。 「お大事にね。あ、戻る前にこれを書いてくれる?」 それは『保健室利用者』と書かれた一覧表で、怪我などで利用した生徒がクラスと名前を記入することになっているらしい。 優太はペンを受け取ってサラサラと記入した。 「あと二人とも、これを持って帰って。先生に渡してね」 そう言って手渡されたのは保健室の利用証明書。 サボったわけじゃないよ、という証明になるのだ。 優太には『怪我の治療』と書かれていたが、チラッと見えた甘凱の物には『怪我をして動けない生徒を保健室まで連れてきてくれました』とあった。 文面を読むだけなら、とてつもなくいい人っぽい。 連れて来てくれる前のやりとりは一切知らないのだから、仕方がないし間違ってはいない。 事実にかわりないが、なんだか納得しきれない優太だった。 「ありがとうございました」 それから優太と甘凱は、真鍋に優しく送り出された。 送り出されて直ぐに甘凱が何故か踵を返して保健室へ戻ってしまったので、これはチャンスと思い優太はできる限りの速足でその場を離れたのだった。

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