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warning night
(※何か随分前に書いたもの※モブ※途中まで)
お家でチンした肉まんと、寒い日にコンビニで買う肉まんは全然違う気がする。
原価は明らかに後者が安くても。
あのちょっと物足りないサイズが、尚更おいしく感じたりする。
(食べたいなあ)
ぼんやりと、何ら思慮もなく考えた。
考えたらやっぱり行きたくなった。
現在午後11時。萱島は戸和の家にいて、彼は大学から帰ったばかりだからシャワーを浴びていた。
「…コンビニ」
ドアを見たり時計を見たり。この前怒られたんだった、小さい子だと思われてるから、夜中に出掛けると叱られる。
ただコンビニは家の近くにあって、歩いて10分と掛からなかった。今急いで行って帰って来たら、彼が出るまでに戻れるのでは。
財布に小銭も余ってるし。
そわそわ。悩んでから変な行動力が湧いて、結局こっそりマンションを抜け出していた。
外気は寒いが何てこと無い。社長の家の近辺の方が、よっぽど治安が悪かった。
歩きながら靴を履いて、手をポケットに喜々として走った。
(いずみのも買って帰ったらいいや)
既に寝静まった夜は人足もない。
誰に会うでもなく、萱島は目的にさっさと辿り着いた。
「――いらっしゃいませ…」
自動ドアを潜る。
ここはお昼間、偶に彼と来た覚えがあった。だけどこの時間に見るのは初めてで、当たり前にレジには違う顔ぶれが居る。
ちょっと目が合った。
猫背の、多分学生。どうしてか目を逸らさないから、萱島は形だけ会釈した。
(ピザまんと肉まんとカレーまんと)
こんな時間に関わらず、綺麗に揃えてある。良い店だ。全部買ったら迷惑か、うんうん悩んでいたら、急に周りが騒がしくなった。
5人連れの若い一団が入って来た。部下と同じ頃合いだろうか、原色に近い髪色の子も居て不思議な気分になってしまった。
学校に行っていれば、あんな風に歳相応に燥ぐのだろうか。それは少し、見てみたい気もするけれど。
(…やっぱ2つだけにしとこう)
寝る前に食べたらまた怒られそうだ。
店員さんに声を掛けようとした所で、隣にふっと気配が近付いた。
「お姉さーん、買ってあげようか」
まさか自分に言ったものだと思わず、反応が遅れた。
肩に触られびっくりして上を向く。
さっきの団体の一部が、妙な距離感でじっと見ていた。端から端まで突っ込みどころがあって声が出ない。
萱島はどうにか、首だけ横に振ってみせた。
「いいよいいよ、お姉さん高校生?近所?」
わらわら他のメンツまで集まってくる。
取り敢えずレジの前だから、邪魔だろうと配慮が先に芽生えた。
(…肉まんが欲しいのかな)
見当外れに眉根を寄せる。萱島は相手を放っぽり、保温器の中を全部買ってしまった。
それから黙って2つだけ取ると、近い青年へ押しやった。
「あげるね、バイバイ」
早く戻らないといけないから、反応も待たず店を後にした。
一体何だったのだろう。
しかし終わったと括ったのは萱島だけで、直ぐに彼らは追いつき肩を掴んできた。
「待ってって、何でお姉さんが奢ってくれちゃったの?」
不良に絡まれてしまった。和泉のお小言も過剰で無かった訳だ。顔色が悪くなる。
昔だったら寄り付きもしなかったのに、我ながら平和ボケしている。
「…そのお姉さんっていうの止めろよ」
「え、じゃあ名前教えてくれるんだ」
うざいい。何時かの敷地で出会ったバトミントン野郎を思い出した。大体もう24だ、こちとら。
「男にお姉さんは止めてって、あと急いでるから」
「え、男の子?わっかんねーよ」
なあ、と背後に同意を促した。
若い子は夜の方が元気だ。テンションが凄い。
いざるのを止めて、腕を掴まれる。
萱島はほんの少し怯えた。半端無く力が強かった。振り払うどころか、ぴくりとも動かないのだ。
「かわいー、なあこっち見てよもっと」
無作法に顎を掬う。
徒広いのに静まり返る駐車場、囲まれて何処にも逃げ場が無くなった。頑張って頼んだら通してくれるだろうか。
幸い恐喝だとか、暴行の気配は。
「肩ほっそいね、危ないよこんな時間に歩いてたら」
「俺ら車あるから送ってくし」
「え、あ、別に」
「大丈夫大丈夫」
ぐっと思い切り抱き寄せられた。息が詰まる。
別に歩いて帰れる距離なのに。断ろうにも太刀打ち出来ない力で、付近のワンボックスに引き摺られていた。
「ちょっと散らかってるけど奥座って…あ、家どこだっけー」
「ひ、ひとりで…」
ふらっ。軽く肩を突かれただけで、簡単に車の座席へ倒された。
他人のシートに背中が沈む。煙草の臭いの中、萱島は呆然と車の天井を見上げた。
「ま、送らないけどね」
殆ど男が乗り上げてきた、その背後でドアが閉まった。
エンジンの唸りへ、ハイテンポなユーロビートが被さる。
騒がしい。異世界に転送されたような空間で、反抗の術もなく震えた。
押し倒した男は、甘い身体をじっとりと眺めている。
「なんか滅茶苦茶勃つわこの子」
「取り敢えずテメエん家行くぞ、途中で運転代われよコラ」
「此処で良いんじゃねえの。停めとけや」
会話が縦横へ飛び交う。それをひとつも拾えず、どうにか現状の理解に向かう。
血流や心臓が全身に響く。何を。
「すっげ怯えてんよ、大丈夫かよ」
「いや大丈夫じゃないだろ、無防備すぎ。ウケるわ」
服に伸びた手を咄嗟に掴む。
知らない顔がいっぱいに覗き込んで、目だけやたらとギラギラさせていた。
「――じゃあさっさとヤっちゃおっか」
(後編の行方
1.和泉くんが助けに来てデストロイ
2.事後とぼとぼ帰宅し、異変を察した和泉くんがデストロイ
3.モブによる軟禁ドエロ
4.続かない
4が有力ですが心の片隅でお待ち頂けますと幸いです)
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