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ring
※また物凄くちょろっと(導入のみ)
※本郷さんがさなちゃんにちょっとやらしいことしてます。本 郷 さ ん です、ご注意。
視線を感知した。
時は既に遅く、立ち上がる萱島の目に彼が映る。
「何してる」
決して憤るでもなく、柔らかい音に、それでも萱島の血液が一気に下落する。
見られていた。
彼の、本郷の部屋へ勝手に立ち入った自分。引き出しの中で目の当たりにした証を、理由も分からず奪った浅はかな自分。
「後ろに何持ってる?」
「な、なにも」
言い訳は昔から下手だった。
床を向き、不可思議に後ろ手を組む。冷たい金属の感触が、途方も無く恨めしかった。握り潰してしまいたい。
もう意味はないと知りつつ、その輪が跡形なく壊れるまで。
(怒っている)
当たり前だ。我ながら訳の分からない行動に、血の巡りだけが五月蝿い。
睨まれている。本郷が、怒った例など知らないだけに異様に慄いている。
「なら手出してみ」
萱島は、動けない。勝手に指輪を盗ったのだから。
未だ大事に持っていた、その事実に驚愕して剥ぎとったのだから。
「……」
返せば良いのに。今ごめんなさいと言えば、それで済むのに。
抵抗して俯いていたら、何時の間にか彼は間近に迫っていた。
過去最悪の空気に息を呑む。それで、肩に触れた手に震えた。
腕を伝い、ゆっくりと長い指が萱島の手を包んだ。何時も自分を溶かす温かい温度。
然れど頑なに手を握り締め、防衛を固める。
「なあ、どうしてそんな物盗ったんだ」
「何、のこと」
「捨てるつもりだったんだ、もう」
とっくに見ずとも中身はバレている。罪を隠蔽する萱島の声が、如実に揺らぎ始めた。
「…嘘だ」
「萱島」
「ちがうよ、未だ好きなんだよ」
男の恋愛は別名保存、とは言い得て妙だ。こんな誓いを持っている限り、余計に忘れられない癖に。
だがそうだとして、萱島には何の関係もない。
本郷が彼女を未だ愛してようが、別の誰かと関係を築こうが、自分には口を出す権利なんて何も。
「返してくれ」
今度ははっきり要求した。
萱島は面を上げ、露骨に感情を乗せて睨め付けた。熱に潤む。
いつ何時も格好良く、理性を湛えた綺麗な目。左右の色が少し異なる宝石。
何故誰彼構わず優しくして。いっそ怒って、珍しい攻撃を向けて欲しい。自分だって特別がいい。
勝手だ、こんな。
「おい」
かたかたと両手はぶれていた。必死に視線だけは立ち向かって、原因不明の衝動で縋り付いていた。
「…何て目で見てんだ、お前」
その意味を解せない。止まった萱島の背が、突然近く引き寄せられた。
ぶつかる身体に驚く。刹那の間に、ゆっくりと唇を塞がれた。
息が。
柔らかく、本当にくっつけるだけの。角度を変え、慈しむだけの。
感触や熱を伝え、そっと離れ。視線が絡み、それでまたふわりと抱き竦めて。
そんな触れるだけの行為で、萱島の体内は次々と異常を来す。
懸命に身体に縋って、呼吸の仕方も忘れる。中枢から震えて、ほんの些少、唇を掠めた舌に崩れ落ちそうになった。
「っふ、…ぅ」
何処までも上手な相手に支えられ、気づけば手中の指輪も取り返されていた。
失くした感触に眉根が寄る。
やっと距離を取った、本郷の目が瞬きもせず直視していた。
心臓が突かれた。
萱島の知らない、欲を求める男の目が見ていた。いつもの保護者の形もない、明確な熱を孕んだ。
「俺の指輪を盗って、それで…どうする気だった」
初めて聞く艶に滲んだ低音。幾度も頭を撫でた大きな手が腰を這い、別な意図を含んで辺りをさすった。
そのいやらしさに血が上る。耐え切れず止めようとした所で、萱島にはびくともしなかった。
「ぁ、…、ほ、本郷さん」
「何」
「へ、っ変にさわるの…やめて」
また泣きそうだ。否、違う。いつも外野に泣かされるだけで。
彼には、一切追い詰められた例などなかったのに。
「は、…ぁ」
さっきから身体の線を撫でているだけだ。背なの曲線だとか、脇腹から腰に掛けてのくびれだとか。
ダイレクトに局所を触る訳でもない、擽る手つきが全身の熱を炙り出し、立つことすら辛くしがみついた。
「こんな事されないと思ってたろ」
頭がついていかない。但し視覚で、聴覚でまざまざと教えられる。
今手を出しているのは本郷だ。他の誰でもない。
「するよ。俺は遥と違って、お前を子どもだなんて考えてないからな」
(未完)
半端ものばかり申し訳御座いません。
需要があれば続編…大丈夫、これは犯罪じゃない。犯罪じゃないぞ~^^(STOP!不純性交遊)
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