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※Co-dependency
(※ベタベタしてるだけ)
「何回いった?お前」
仮眠室に誘拐され、ベッドに投げ出されたかと思ったら。
間髪入れず、背後から勝てない体格が覆い被さった。
それで喘鳴するまで、何度も好き勝手に突き入れられる。
もう泣くのも疲れた頃合い。
やっと僅かに身を剥がした青年が、実に凶暴な目つきで自分を見下ろしていた。
「はっ、ぁ…ぅ、」
「力抜けきってるな」
当たり前だ。
シーツに全身を横たえ、萱島は真っ赤な面でどうにか息を紡いだ。
最近、戸和が容赦しなくなってきた。
初期は何だかんだ、果物でも扱うみたいに、滑らす指の圧すら気を割いていたのに。
今じゃ萱島が壊れるギリギリを分かって、喚くのも聞かず四肢を押さえつけてくる。
「っ、も、やだ…」
「離さない癖に」
「…そ、だけど」
上擦る声がどもった。
それはだって、萱島にしても嫌な訳じゃない。
嵐が来ようが仕事に忙殺されようが、眉一つ動かさない彼が。
自分の前では欲を隠しもせず、したいまま本能のままに噛み付いてくる。
死んでも言えないものの。
ちょっと優越感すら覚えていた、でも流石に勘弁して欲しい限界もあるのだ。
「いやだ、いじめてばっかり」
「ん?」
「もっと、や、優しくして」
指の先まで熱を孕んで怠いまま、それでも懸命に萱島は両手を伸ばした。
目を眇める。
攻め立てるのを終わらせ、待ち構えていたかの様に了承して背中から掬い上げた。
腕の中で必至に呼吸する柔らかい身体。
まるで弱い、子猫に等しい存在を愛で、優しく抱き締めてくれる。
体温に安堵した。
結局いつも戸和は、萱島が面倒な建前や羞恥を全部捨て、素直に甘える頃になって漸く許してくれた。
「最初からそう言いな」
脳髄に響く声で窘められ、悄然と眉尻を下げた。
そうだいつも逃げてしまうから。
シャツの胸元に額を預け、萱島はか細い息を紡ぐ。
こうやって怒られるんだ。
反省はしているけれど、恥ずかしい。
砕けた身を捕まえ、長い指がするすると熱い表面を辿る。
どうも日増しに厭らしくなる。
腰は締まり、なだらかな尻が殊更に柔らかく肉づいて、今撫でているだけの刺激ですら感じている。
身を捩り、もっと素直に鳴けばいいのに。
今日も慎ましく喘ぐ相手を撫で、ならばと小さい口を舐め取った。
「ん、んぅ…」
甘くて堪らないソフトクリームを掬うみたいに。味わうみたいに。
努めて優しい仕草が、段々と絡んで熱で溶かし始める。
「ふぅ、っぁ」
僅かに背中に残っていた芯が、今度こそ粉々になって崩れた。
戸和の腕の中、されるがまま口内を侵されていた。
段々と身が戦慄く。
引くのを許されず、腰からぐっと連れ戻されたものだから、憚りもない高い声が出た。
もう駄目だ。そろそろ止めてくれないと。
隙間も無く塞いで、内蔵を抉る感触だけで気絶しそうなのに。
彼が触れた肌。
いっそ擦れる衣類だけで。びりびり表面が感電し、怖いくらいの快楽が這い回る。
「、ん…ぁ、んん」
一層切ない息を吐き出し、無我夢中で青年のシャツを引っ張った。
震える身体を悟り、口を離した戸和が覗き見る。
じっと零距離で見られる手前、萱島はかたかたと震え、内部を何度も収縮させた。
今日何度目かも分からない。
真っ逆さまに谷底へ落とされる様な、逃げ場のない感覚。
「っん、ぅ」
「…流石に心配になってくるな」
キスだけでドライオーガズムに達したのを、余さず観察されていた。
ただ羞恥に抵抗する余裕もない。
ぐったり戸和へしなだれ、痙攣のやまない身をくっつける。
素直に抱きついたのが功を奏したのか、虐めるのは終わりになったらしい。
大きな手が優しく背中を撫ぜた、額に、頬に、労る様な口吻が降りる。
「暫く寝てな、集計やっとくから」
「い…いやだ」
「沙南」
言うこと聞け。
窘める唇が瞼に届いて、きゅっと反射的に目を瞑った。
ぽうと熱が灯され、箇所を抑えた萱島が蕩けた顔で縋る。
細い眉根が寄った。
辛そうな表情になって、どうにか舌っ足らずが本音を零した。
「未だ、いてくれないとやだ」
そう、そんな風に衒いなく。
欲しくて堪らない顔をして、必死にねだれば良い。
傍に居てやるから。
以上に優先する事など、有りはしないから。
(どうせ周りにはとっくにバレてる)
言ってやれば卒倒しそうな事実は、時期が来るまで仕舞っておく。
考え、押し黙る青年に大きな目が瞬いた。
無視しないで、とでも言いたげだった。
萱島が些少な怒りすら浮かべる。
襟を苛立たしげに引っ張る。
実に拙い動きに笑う。
予期して身を屈めてやった。
甘ったるい唇が押し付けられ、下手くそだと呆れながらも黙って腰から掻き抱いていた。
(2017/11/19)
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