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徹夜組ボーイズトーク4

(本部メインルーム:深夜未明) 「千葉、千葉って」 「何だいハニー」 「お前、メガネべらぼうに似合わんな」 「放っとけ、俺はこの前の糞ゴルフでコンタクトをロストボールしちまったんだ」 「名前まで付けてたのにな、可哀想に」 「ああ、アダムとイブ」 「お前は自分がエデンだとでも思ってんのか?」 「創造神気取りか」 「…やかましい!これ以上俺を追い詰めるな、俺の失ったハードレンズは二度と戻ってこねえんだ」 「いや買ってくれ」 「まあそんな事はどうでも良い、マクロ動いた?」 「動かない…参照先エラーになる」 「見たけど全然分かんねえわ。牧は何処に行ったんだろうな」 「牧先生は寝屋川隊長と打ち合わせだよ」 「うーん…やあねえ。今日中に動けば何とかなるかしら」 「記事一括で抜く奴?旧版でもダメなの?」 「ダメくさい。絶対に働かない意志が垣間見える」 「俺も今動かしたけどエラー出るな」 「畜生、全部間宮の所為だ。エデンを紛失したのも、俺にメガネが似合わんのも全部」 「聞いたか?何でも俺の所為にしたら良いと思ってるぞ」 「動かんと仕事ができん。取り敢えず面白い話してくれ」 「…またかよ」 「今夜も頼むぜ間宮」 「昨年の夏並に盛り上がるヤツを頼む」 「仕方のねえガキ共だ。良いか、これは俺が日暮里の駅前を歩いてた時」 「お前…また日暮里の話か!」 「いいんだよもうお前の地元の話は!どんなけ布教に必死になろうが、乗り換え以外で立ち寄らんわ」 「都外に住むあなた達に、日暮里ガチ勢の気持ちは分からないでしょうね」 「分かるかあんな居酒屋しかないとこ、東陽町の方が未だ何かあるよ」 「ハァン?強風で止まる脆弱線ユーザーは黙ってろ」 「てめえ、俺の東西線の悪口はそこまでだ…あっ」 「ん?」 「副社長」 「…ほんとだ」 「久し振りだなこっち来んの」 「しかしいつ見ても麗しい」 「お疲れ様です本郷さん、どうされました?」 「お疲れ、ちょっと牧に用事があってな」 「牧ちゃんなら下に居ますけど」 「あ、打ち合わせか。どうしよ、此処にいていい?」 「ずっと居て下さい。寧ろ俺の膝に座るのもやぶさかでない」 「お前の膝は…今際の際にとっとくわ」 「そうだ本郷さん、記事取得マクロがエラー出ちゃうんですけど、ちょっと見て貰えませんか」 「あのワアーって動くやつ?」 「そう、そのずっと見てたら気持ち悪いやつ」 「気持ち悪いとか言うなよ、牧可哀想だろ」 「牧はいつだって可哀想ですよ。先月から家帰れて無いんですから」 「…本気かよ。ちょっと待って、アホに電話するわ」 「また始まるのか、ボギャ貧な夫婦喧嘩が」 「時はまさに世紀末だな」 「何故出ねえ…ブチ殺すぞアイツ」 「本郷さん、そういや握力幾らになりました?」 「65ぐらい」 「人よりどっちかと言えばゴリラ寄りになりましたね」 「あーあもう…知ってる?牧が入った頃な、未だ俺と遥と3人だけで回してたんだわ」 「まあ聞いたことは」 「そしたらアイツ、出勤初日の牧を事務所に閉じ込めて鍵掛けて」 「冗談でしょ」 「まだ未成年ですよその頃」 「ほんとだよ、研修も無しに必要な社内ツール全部作らしたの。今思えば良く辞めなかったよな、というか良く然るべき場所に訴えなかったよな」 「なーるほど…初回のインパクトが凄すぎて、現状は牧にとって微温湯な訳だ」 「残念ながら俺が3日目に気付いて助けに行った頃合い、既に復讐心から暗黒サイドへ闇堕ちしてた」 「もう過去には戻れなくなったんですね」 「そして数週間後…情報共有システムのβ版に加え、序に密かに製作してたエロゲを突き出してな」 「ちょっと」 「それが牧の代表作、シーズンメモリーズの誕生という訳だ」 「エロゲのルーツに帰結せんで貰えますか」 「ところでマクロ動きました?」 「…キャッシュ掃除してリログしたら直るかと思ったんだけど。人生思うように行きませんね」 「んー…何でしょうね、ブラウザの方の不具合かな」 「そういや何で千葉メガネ掛けてんの?」 「コンタクト紛失したんですって」 「ああ…お前アレか、飯田社長んとこのゴルフで朝まで引きずり回されたパターンか」 「うん、そう…」 「見事に覇気が無くなったな」 「そんな落ち込むなよ、コンタクトぐらい俺が良いの買ってやるよ」 「本郷さん…」 「ちょっと副社長、俺とはいつ結婚してくれるんですか」 「間宮と?するか?」 「えっ…い、いつ?」 「今」 「今」 「…まさかこの残業中にご祝儀を用意する羽目になるとは」 「おめでとう間宮、お前には過ぎた旦那だけど幸せになれよ」 「日暮里以外に家買えよ」 「本当に良いんですか副社長…?社長じゃなくて、俺で良いんですか?」 「いいよ、コンビニ行ってゼク◯ィ買ってきてやるよ」 「これは本郷さん3日は寝てませんね」 「嬉しい…何か俺にして欲しいことありますか?」 「毎日玄関で出迎えてあの3択聞いてきて」 「まさかの糞ベタ」 「分かりました、じゃあちょっと此処が家なんで…そっちから入ってきて貰えます」 「何か始まったけど、小芝居が」 「アンタら三次会じゃねんだぞ」 「さーて…今日は早いって言ってたけど、未だかしらあの人」 「ガチャッ」 「あっ、お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それともお…」 「何でも良いからさっさと服脱げよ」 「…ちょっと本郷さん、帰って第一声がそれは」 「どんなエロ魔人ですか」 「新婚の旦那の頭ん中なんてエロいことしか無えんだよ」 「凄いぞ偏見が」 「自棄にならないで下さいよ…あ、牧ちゃん帰ってきた」 「リーダーお帰り」 「だだいま…って何、この微妙な空間」 「其処は俺と間宮の新居」 「…居たんですか副社長!お疲れ様で…新居?」 「そうだ牧さ、マクロ動かないから見てくんない?」 「ええ…うん、俺未だ新居問題のが気になるんだけど…まあいいや、どうしたの」 「実行したらエラーがほら」 「ほんとだ、なんだろ。最近パス変えた?」 「…変えたわ」 「じゃあ多分、此処の参照元変えて…1回面倒だけどフォーム消して貰っていい?うん、それでログインして回してみそ」 「動いた」 「よかったー、じゃあ更新版は共有システムにあげといて」 「…何かさ…。ほんとさ、お前その…糞みてえな糞スウェットと仕事とのギャップが卑怯だと思うよ」 「何回糞って言うねん」 「分かる…端から本郷さんみたくビシっと決めて来られたらいいけど、お前はその、何て言うか雰囲気がアカンよね」 「前から思ってたんだけど」 「何だ」 「この職場、野郎しか居ないお陰で年々可笑しくなってるよ」 「……」 「…まあ」 「そうね」 「…副社長、そろそろ女性社員採用しますか」 「良いけどお前ら、どうせエロい事しか考えて無いんだろ」 「ダメだこの人、本気で疲れてるわ」 「取り敢えず今日はもう切り上げよう」 「本郷さん飲みに行きますよ」 「分かった、実は日暮里に最近良い店が」 「冗談でしょ」 (そろそろ日暮里在住の方に刺されそうなので自重)

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