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第2話 欲しいのは……。

「これで勘弁してくれちょ、今度からは先生のいない屋上で吸うき。それでええか?」 「飴、ありがとうございます。でも、それとこれとは話が違います! 僕が言いたいのは吸わ……んん――」  先輩に口を塞がれてしまった。手で。 「黙って! 葉桜先生や。俺、あの人には弱いんじゃ」  弱点……あんまり嬉しくない。だって、あの人綺麗で面白いと噂の先生だもの。先輩も男なんだな。なんだかムカつく。だからアマガミしてみるも、反応は薄い。 「痛いけ。やめるき。俺の手は食べモノじゃなかと」  普通の反応だ。もっと噛みつきたいけど、それじゃかわいそうだからなめてみることにした。 「こ、こら、舐めるんやない! びっくりするがや」 (先輩びっくりしてる!) 「先輩は葉桜先生が好きなんですか?」 「な……そんなんじゃなかと。こ……こっちに来るばい。その飴美味しいとよ。舐めるとよか」  一体どこの方言が混ざりに混ざり合わさってるかわからない。でも先輩好きなんだ。あのうろたえ方は普通じゃないもんな。  僕がしゅんとしていると、葉桜先生が心配そうに僕のおでこをなでてくれる。優しい。悔しい! 絶対僕の黒井先輩にしてみせる! 「大丈夫? あの子ああ見えて、悪い子じゃないのよ? でも飴もらったの? 貴方気に入られたのかもしれないわね」  先生ももらってるのかな? 「私は貰ったことないから貴方はラッキーかもしれないわよ。貴方。黒井君を妙に目で追うのね、好きになっちゃったとか? なぁんちゃって!」  舌をだしてぺろっとする先生。そういう仕草に弱い男の子は多いはず。でも僕は、ってどうして僕が好きなことバレたんだろう? おかしいな。ポーカーフェイスが得意な僕が。 「白木くんは顔にすぐ出ちゃうからね、真っ赤になってたわよ」  白木侑汰(しらきゆうた)、一生の不覚。ポーカーフェイスが効かないなんて! 「君はいつもニコニコしてて気分がよくなるわ。あの子も見習ってほしいわ」  僕は先生が憎い。あの子呼ばわりされるなんて仲が良いのかな? 「眉間にシワを寄せてどうしたの? あの子に何かされたの?」 「いえ、なんでもないです。そろそろホームルームが始まる時間なのでお先失礼します」 「ええ、風紀委員の仕事お疲れ様!」  貴女の笑顔なんていりません。僕は黒井先輩に言われたいな。

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