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第5話 僕の悩み
「ありがとうな! 可愛いやつによそってもらうのはいいよな。ハハッ」
「僕は可愛くなんてありませんよ?」
しらっと僕は言った。それからお前は可愛いじゃんなどと突かれぷ^っと膨れていると、
「そんな顔すんなよ。可愛い顔がだいなしだろ? 美人さんなんだから見てて、目が潤うぜ?」
「ええ、ええ、そうでしょうそうでしょう。僕はどうせ、美人ですよ。かっこいいなんて思ってもらえませんよーだ。先生からもセクハラされてますよ。もう、男嫌だ。女も怖いけど!」
僕はグイっと飲み干すともう、酔ってきてるせいか、自分の感情にコントロールが効かなくて、ポツリポツリと愚痴り出す始末。
情けないけど、僕はかっこいいところなんて一つもない。わかってる。所詮は可愛いで終わってしまうんだから。この顔が憎い。
この体も、まぁ、でもそれでもヴァイオリンできたらいいいかと思えてしまうのが自分の良いところなのかなって思うけど、今夜は違ったようだ。
「は? お前セクハラ受けてるって……守ってやるからな? 俺が全力で。何かあったらいえよ。俺で良ければだけど。それにお前がいつかっこよくないって言ってたけどさ、かっこいいと思うぞ、ヴァイオリン構えて音楽、奏でてるところ」
「!」
僕は嬉しさ? いや、そうじゃない。格好清く見えないっていうコンプレックスがあるからその言葉に感動してしまった。
「僕がかっこいい……ですか?」
「ああ、俺はそう思うけどねぇ。それとコンサートマスターになりたいって言ってた時の顔、あのときはキラキラ輝いていて、カッコ良かったぜ?」
赤面……。
嬉しい。
コンサートマスターになりたいってことも伝説の男には伝わってたなんて。僕の事知っててくれてたなんて……! これ以上ないってくらい笑いながらお礼をいうと。
「すーぐ可愛くなんの! 笑ってるほうが朗らかでいいぞ? いつも、心ここにあらずの表情をしてるお前は格好悪いぜ?」
あーアレイさんとよくテレビみてくれてるんだなぁリズさん。
僕はよくミュージック・クリップに出ても、心はだいたい課題曲の解釈の仕方を考えたりしてるから上の空。おまけに『氷雨様!』の声に微笑みかけやしないでそのまま、何もなかったようにしてた。
格好悪いか……。ファンにもそう思われちゃうかな?
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