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第7話 手繋ご?

 暖かかった店内を後にした僕達。    良い具合に酔いも回ってたはずなのに、外に出たら寒くて、早く家に帰ろうということになった。でも僕はまだ夢心地。醒めない夢を見てる感じで、嬉しい。  それにしても寒い。どんな心地であっても、現実は変わらない。 「寒いですねぇ。家近いんですか?」 「こっから十五分程」  うわぁ、微妙な距離というやつだ。僕のマネーでタクシーでも拾っちゃおうと思って提案しようとすると。 「ほら!」  と手を差し出してくる。なんだろう? 「手繋げば寒くないだろ。手握れよ。俺の手暖かいから」 『ッポ』と赤面してしまってなかなか手を差し出せない僕。手を繋ぐって付き合ってるんじゃないんだから!  でも、憧れてしまう。  この大きな手を掴んだら寒くないだろうなって思うだけの安心感があった。  僕はそっと差し出された手を握った。 「氷雨、顔が朱いぞ? 緊張してんのか?」 「べ、別に……手が大きいなって思っただけです。なんにもありません。やましいことなんて!」  僕は何を言ってるんだ。  やましいことがあってたまるか!  可愛いネコのぬいぐるみが目立つ。やっぱり。彼女いるのかなぁ……。彼女さんいいなぁ。こんなにいい男に愛されて。  ッハ! 僕は何を羨ましがってんだ! 乙女じゃないんだから僕は。  一人思いに耽っていると、手をつないだ手が熱い。 「お前の左手の指先、硬ぇのな」 「へ!? ああ、ヴァイオリンの弦のせいですね。長年やってるもので……。いつも彼女さんとこうして手、繋いでるんですか?」  しまった! 余計なことをきいてしまった。  僕どうしたの? 嫉妬してるみたいじゃん。いくら僕の憧れの人と出会えてご飯一緒して、これから泊まりという『オール』をしに行くにしてもだ! 侵入していい領域とイケナイ領域がある。 「氷雨は?」  ふと次の言葉を待っているように感じた。 「僕はいませんよ。学業に、勤しんでいますので」 「俺もいないぜ? 女って暑苦しいだけだから、可愛げはあっていいけど、うざいし、男のロマンってやつわからねぇから。ホモホモしいとかいって、男と絡んでるとすーぐゲイにしたがる」  うんうんと頷いちゃう僕。  って、僕、こんなところを写真で取られたら、ホモ扱いされちゃうんじゃ……。  そんな風に考えながらも、この手を離せない僕がいて、愛おしく感じてしまっている。重症だ。 「じゃぁ、どうしてぬいぐるみ持ってるんですか? 姪っ子さんとかいるんですか?」 「えっと……これは俺の趣味。ヌスーピーの人形が好きなんだ。てか、人形全般好きで集めてんの! 笑うなよ。俺だって乙女っぽいとこあってもいいだろ!」  僕がおかしそうに口元を手で覆って笑っていたら『お前なぁ!』と恥ずかしそうに頭を叩(はたか)れた。  伝説の男も乙女な部分ありと。

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