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第10話

「あ、あなたはっ、」 その店に通うようになったのは また清水時春に会えるかも知れないという出来心と、 店長の作るだし巻き卵が絶品だったからで 上品そうにみえて 田舎料理や創作料理がたくさんあり、話しかけやすい店員さんの雰囲気にすっかり心を許してしまった。 周りに友達がいない分、ここにくれば心が幾らか休まる。 そんなこんなで四回目の来店にして、清水時春と再会を果たしたわけだ。 黒い半袖のシャツにジーンズ姿の清水時春は、いつもとは違い黒縁の眼鏡をかけていた。 仕事が今終わったところなのか少し疲れた表情をしているように見える。 「どうも」 会いたかったのは、事実だが いざ目の前にするとどうしてもその場から逃げてしまいたくなるのは、なぜだろうか。 「ちょうどお渡ししたいものがあったのでまた、会えてよかったです」 また会えてよかった。そんなこと今まで言われたことがない。 心の中の自分が完全ににやけている、顔にでてはまずい、堪えろ俺。 ごそごそと音を立てて鞄の中を漁ると暫くして、あーー家だ…、と溜息が聞こえてきた。 何だかよく分からないが目的のものは自宅にあるらしく今は持っていないようだった。 に、しても鞄の中にある大量の資料みたいなのは一体何なのだろうか。 台本?とかなのか。 うーん、気になる。 あまりじろじろ見るのも失礼だとは分かっているがついつい目がいってしまう。 すると清水時春と目が合った。 声もさることながらその澄んだ力強い瞳が魅力的だ。 清水時春に関しては女性からの人気もすごい。 何と言ってもその容姿が決定的な理由だろうが。 身長178cmで細くてすらっとした体型に、小さな整った顔。 透き通るような黒い髪。 ベストオブイケメンである。 男の俺でも憧れて、みとれてしまう。 それなのに清水時春は、その容姿からは予想もつかないような天然発言をする事から声優界での愛されキャラを築いている。 イケメンで天然とか、なんかもう尊い存在すぎる。 「あの、すいません。次、いつ会えますか?」 唐突に放たれた一言に動揺を隠せない。 今、確かに、次、いつ会えるかと言った。 次? また会えるのか。 「いっ、いつでも!会えます!会いに行きます!!」 あまりに驚いて、裏返った酷い声で返事をしたので店員さんに苦笑いされてしまった。

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