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第12話
それからの事は、あまりはっきりとは覚えていない。
仕事が長引いてしまい遅れてしまったらしい。
申し訳なさそうに、しゅんとなっている清水時春に
全然かまわないと伝えてやると少しだけ表情が明るくなって
でもお詫びに、といってお酒を奢ってくれた。
飲んだことのない高そうな酒だった。平社員の二十代の俺にはせいぜいビールがお似合いなのだが。
照れくさくなってちょっと笑って
アルコールが効いてきて
程よく酔いがまわって、清水時春の話もなんだか面白くって。
それで
それで………
それから、俺はどうしたんだっけ。
「俺、お酒はもういいです。お水、貰えますか?」
はっきり言葉も発音できるし
頭も冴えている、方だと思う。
別に泥酔している様子もない。
それならなぜ
「水ですね。はい」
なぜ
「素敵な部屋ですね」
なぜ清水時春の部屋に
上がり込んでるんだ俺は。
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