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第13話
「それであの話が…」
目の前で楽しそうに清水時春が俺に話しかけている。
非現実的な状況すぎて
目をパチパチさせる俺なんて、気にする様子もないようだ。
「……ってあ、」
「はい?」
「ごめんなさい、渡すものがあったんですよね、ちょっと待っててもらっていいですか?」
深夜、だよな。
終電とか無いよな。
え、なにこれなんなんだよこれ。
清水時春の部屋(多分)は、
綺麗なマンションの一室で、
ものがあまり置いていないせいもあってずいぶん広く見える。
生活感、まるでなし。
棚には丁寧に本やCDが並べられている。
多分、あの薄めのやつは、台本だろう。
ファンの俺からしたらここは宝の山にしか見えない。
大人しく座っていられないくらい興味津々で、すっかり酔いもさめてしまったところで
清水時春が袋をもって戻ってきた。
「これ、すいませんでした」
そう言って渡された袋には、あの日清水時春によって破壊された音楽プレーヤーが入っていた。
俺と清水時春の出会いのきっかけである。
しかし、以前のものとは異なって割れたはずの画面が綺麗に戻っている。
「修理に出して、傷は治ったんですけど音がならなくなってしまったようで」
そういって電源をつけて再生ボタンを押した。
確かに何も聞こえない。
いや、でも俺はそれどころではなかった。
画面いっぱいに表示されるイケメンの男性のイラスト。
曲名の欄には『年下彼氏が隣で寝てくれるCD(CV 清水時春)』とある。
このシリーズは大変人気で、俺のお気に入りでもある。
いやいや、そう言うことではなくて
「中、見ちゃいましたか…?」
「ご、ごめんなさい!!!!」
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