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ラストタイム・ラバーズ 06
こういう時、人間ならなにを欲しがるんだろう。
胸の内をカラカラに乾いた風が吹き抜ける。
「イブ? 急には思いつかないか。じゃあ、三日後にもう一度聞くから、それまでに考えておくんだよ」
うまく会話を繋げられない僕に呆れることもなく、シブタニが明るい声で言いながら頭をくしゃくしゃとかき混ぜた。
それだけで肩の力が抜け、無意識に体が強ばっていたことを知る。
近頃の自分はなんだかおかしい。
二か月前までは顔を見られただけで一日中嬉しい気持ちになれた人と、一緒に時間を過ごして、会話をして、触れ合っているのに、同じだけどんどん遠ざかっていくように感じて、途方に暮れる。
同時に、体の反応も意に反して痛んだり固まったり縮こまったり。
そんな風になるのは決まって、シブタニと僕の違い――人間とAIの違いを強く意識した時だった。
「明日もまたバタバタするから、このあと一緒にシャワ―を浴びて、一緒に寝て、朝までずっとくっついてよう」
「シャワ―は控えめにお願いします……」
「本当なら一緒にバスタブに浸かりたいくらいだよ。仕方ないから、イブを綺麗に洗ってあげるね」
「う、うん」
頷くと、慣れた手つきで横抱きにして持ち上げられ、浴室へと連れて行かれた。
――欲しいもの、か。僕はなにが欲しいんだろう。
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