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ラストタイム・ラバーズ 08
しかし、そもそも人魚でなければ王子様の命を救えなかったのだから“もしも”なんて考えたところで意味はない。
人魚姫は人魚で、王子様は人間だった。
愛する人を殺めるくらいなら、自分が消えることを望んだ。ただそれだけだ。
そんな選択しかできなかった人魚姫を悲しく思うけれど、僕だってきっと同じ結末を選んだに違いない。
例えばこのままシブタニとの関係が前進するどころかどんどん距離ができてしまい、いつか彼が“イブ”への興味をなくしてしまったとしたら、僕はなにも言わず廃棄処分を受け入れるだろう。
LLはシブタニがいらないと言えば、すぐにでも僕をスクラップにするに違いない。
それでも嫌だなんて言えない。
困らせるようなことはしたくない。
シブタニにとって煩しい存在になるくらいなら、“イブ”が消えてしまえばいい。
ほら、人魚姫と同じだ。
しかしその場面を想像すると、なぜか胸のあたりがぎゅうぎゅうと収縮して、呼吸が浅くなる。
痛覚もないのに痛みを感じて、思わずアトリエを飛び出した。
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