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ラストタイム・ラバーズ 10
『問題視される廃AIの不法投棄』
『訴訟件数増加。相次ぐAI盗難被害』
ドキリと偽物の心臓が飛び跳ねた。
急に意識が遠いところへ飛んでいき、高い場所からぼんやり見下ろしているような感覚に陥る。
休憩室に出入りするようになってから、世間ではAIに関する犯罪や社会問題が毎日のようにニュースで取り上げられていることを知った。
LLの関係者たちが、こうして実情を把握しながら開発に取り組んでいることも。
ここ一週間、不穏なニュースを目にすることで、余計にシブタニとの距離を意識してしまっている自覚はある。
記事によると、いらなくなった廃AIは、壊れて動かなくなったものから、犯罪に使われたもの、単純に飽きてしまったものまで、高額な処分代を出し渋り、不法投棄する人間が後を絶たないらしい。
そうかと思えば、無断で他人のAIを持ち去り、マスター登録をしていない人間が暴行を加えて訴えられるケースも増えている。
AIという存在は、人間にとってモノ以外の何者でもない。プログラムされたパターンを守り続ける僕たちと違い、ヒトの心は変わるのだ。
だから、いずれは必ず僕も不要の烙印を押される日がくる。
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