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ラストタイム・ラバーズ 12
急に鉛で重石をつけたみたいに足が重くなった。
鳩尾辺りの臓器が氷のよう冷え冷えとしている。
とどめと言わんばかりに、「再来週にはここを出て行くんじゃないか」なんて聞かされ、ぎこちなく足を引きずって、どうにか休憩室を後にした。
シブタニがLLを辞める……。
再来週にはTOKYOを離れて、アメリカへ……。
呆然としたままどうにか来た道を戻り、アトリエに辿り着く。
“ショック”が大きくて、不安や心配の数値は眠ったまま、情報処理が追いつかない。
――そうか。ここのところシブタニが忙しくしてたのは、ここを辞めるからか……。
ゆっくりと状況を整理して、現状の枠に落とし込んでいく。
きっと引き継ぎや帰郷の手配などで手一杯だったのだろう。
LL運営の柱ともなるシブタニなら、辞めるのだってそう容易くないはずだ。
シブタニとの距離がもう縮まることはないのだとようやく理解して、あと何回会えるのだろうと考える。
偽物には偽物の、ヒトに夢を見せるという役割がある。
それなのに、僕はラバーズとして役割を果たせないどころか、シブタニに助けられてばかりだった。
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