20 / 26
ラストタイム・ラバーズ 16
あんなに煩わせたくないと思っていたのに、結局はひどく不快にさせてしまった。
僕は最初から最後までだめなラバーズだ。
とめどなく瞳から塩水が溢れ出て、頬を伝う。
そうなって初めて、無理に側に居座り続けるよりも、今まで側にいられたことが、既に何倍も幸せで大切なことだったのだ思い知る。
「ごめんなさい。人間ならどんなものを欲しがるのかわからなくて……変なこと言ってごめんなさい。僕シブタニに出会えただけでも幸せだったのに、おかしいな。今言ったの、忘れてください……」
引っ込む気配のない涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら俯くと、先程とは違う落ち着いた声音で、シブタニが言った。
「俺がLLを辞めること、どこかで聞いちゃった?」
「……はい」
「他にはどんなこと聞いたの?」
「再来週にはアメリカに行ってしまうって……」
「……それで全部?」
返事の代わりに頷いた。
喉がひくひくして変な音が漏れている。
シブタニがなにか考えるように黙したあと、そっと指を伸ばして僕の顎を持ち上げた。
複雑そうに揺れる瞳と視線が交わり、言葉を失う。
ともだちにシェアしよう!