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ラストタイム・ラバーズ 18
感情が昂って、思わず目の前のシブタニにぎゅっとしがみついた。
「シブタニが好き。大好き!」
「そっか……よかった。俺も大好きだよ。……うーん、違うな。しっくりこない。あのね、俺は愛してるの。ライクじゃ足りないの。イブにはわからないかもしれないけど……」
「僕だって愛してる。ラブだよ。シブタニにはわからないかもしれないけど」
人間には人間の、AIにはAIの主張があり、真っ向からぶつかり合う。
ふ、とどちらからともなく吐息がこぼれ、あははと笑い始めた。
おかしいな、さっきまで号泣していたはずなのに、涙がもう乾き始めている。
「知ってると思うけど、LLに在籍している限りラバーズを所有することは許されない。
許可しないLLの狙いもわかるけど、俺はどうしてもイブのマスターになりたかった。
だってそうだろ。愛する人が他人のものだなんて、我慢できない。
それにちゃんと抱きたくても、マスターじゃない人間が無断で行為に及ぶのは犯罪だ。
最近裁判沙汰の事件が増えて、社会問題になってるのは知ってる?」
突然尋ねられた内容には覚えがあった。
休憩室に足を運ぶようになってから、何度となく目にしたニュースや新聞記事。
昨日も同じような記事を見かけたばかりだ。
「昨日見かけた新聞に書いてあった」
「そっか。やっぱりLLにいると嫌でも目につくよね。
実はラバーズの胎内に所有者以外の精液が付着すると、DNA情報がデータ化されて警察に転送される仕組みになってるんだ。
それくらいLL製のラバーズは犯罪対策バッチリなの。
まあ、そのシステム開発に協力してるのも俺だけどね」
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