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ラストタイム・ラバーズ 19

 シブタニは苦い顔で微笑みながら、僕を抱き上げて向かい合わせで膝に乗せる。  彼が恋人としての行為を最低限に留めていたのは、そういう理由があったからなのだとようやく理解した。  大きな手が頭を撫で回す。ちゅ、と軽く唇をついばまれ、胸がほわんと温かくなった。 「イブは知らないかもしれないけど、俺は日系アメリカンなんだ。LLを辞めたら正式にイブのマスターになって、アメリカに連れて行く。アメリカに行けば人間とAIでもパートナー登録ができるんだよ」 「パートナー登録……?」 「うん。法的にパートナーだって認めて貰える制度があるんだ。日本ではなかなか実現しないけどね。要するに結婚みたいなものだよ」 「け……結婚?」 「そう」  目尻を下げて、シブタニがおでこをぐりぐりと押し付けてくる。 夢みたいな話ばかり畳み掛けるように聞かされ、鈍い反応しか返せない。 「イブの所有権は、来週には譲渡されてる予定だよ。 LLを説得するのも時間がかかったうえに、申請してから登録証が送付されるまでかなりタイムラグがあるから、ずっと一人でやきもきしてた。 向こうでの新居ももう手配してあるんだ。 手続きだの引き継ぎだのでバタバタしちゃって、ゆっくり相談もできなくてごめんね」

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