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第4話

「ラバーズを人間と混同してしまわないよう、所員の購入を禁じるなんて酷い話だよね」 アトリエとは名ばかりの雑然とした作業室で、天才の名を欲しいままにしている男がだらしなくソファに寝そべっている。 新米助手はその様子を咎めることもなく、テーブルに淹れたてのコーヒーを置いた。 香りにつられて男が上体を起こす。 「うん、いい香り。君はコーヒーを入れる天才だね」 「ありがとうございます。ミスター」 「ミスターなんて堅っ苦しい呼び方は禁止だって前にも言ったでしょ!」 「仕事中なのでそんなわけには参りません」 キッパリと言ってのける助手にシブタニが肩をすくめる。 「まったく、イブにはかなわないね」 「シブタニの助手になったんだから頑張らないと」 得意げに胸を張るイブを、彼は眩しげに見つめた。 一週間前、なんとしてもイブの廃棄処分を阻止するため、シブタニはLLのトップに無理を言って直接交渉に乗り込んだ。 ラバーズの購入は禁じられているが、助手としてアトリエで預かりたい、それがダメならデザイナーとしての契約を破棄してイブを引き取るという意思を伝えると、世界に誇るヒットメーカーをLLがみすみす手放せるはずもなく、要求は受け入れられ、研究助手としてイブは男の元に配属されたのだった。 「イブ、頑張ってくれるのは嬉しいけど少し休憩しよう。おいで」 シブタニの低い声が甘く響くとイブは途端に抗う気力を失い、素直に隣に腰を下ろした。 「エライエライ」 頭を撫でる手つきが心地良くて、シブタニの肩に頬を擦りつける。 「覚えてる? 君が俺のDNAを欲しがった時のこと。あの時本当はその場で君を押し倒して、直接俺を注ぎ込みたくてたまらなかった」 「……そう、だったんですか」 「今夜、俺を受け入れてくれる……?」 顔を上げると愛おしげに細められた瞳と視線が絡み合った。 あの時イブは全てを失うはずだったのに。 心の底から願ったことが今夜叶うのだと思うと、胸がドキドキと高鳴る。 返事の代わりに無言で伸び上がり、愛する人の唇にそっとキスを落とした。

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