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第17話

 学校へ向かいながら、大きなあくびを繰り返す俺に、柴田が笑いながら「寝不足か?」と聞いてくる。 「うん・・・・なんか最近よく眠れてないんだ。」 頭をガシガシ搔きながら言うが、本当の事だった。 「試験が近いからじゃねえの?小金井、試験勉強してるらしいじゃん。聞いたよ、同中だった頭のいいやつに教えてもらったんだろ?長谷川も一緒に行ったって言ってた。」 「まぁ、そうなんだけどな・・・・。やっぱり慣れないことをするもんじゃないな。頭痛いよ。」 「ははは・・・肝心の試験日に熱出すなよ?!」 「はは・・・ホントな!」 いつもの道を歩いて行くが、寝不足のせいか本当に頭が痛くなった。 目に入る彼岸花の赤い色は、余計に頭痛を酷くさせる様で、今日は花を愛でる気にもなれない。 学校へ着くと、しばらく授業を受けていたが、頭がガンガンしてきて辛くなったので、保健室に行って頭痛薬をもらおうと階下へ降りて行く。 賑やかな男子校の中で、唯一静かな場所。 保健室に用のあるような生徒は滅多にいなくて、時々怪我をした奴が絆創膏をもらいに行くぐらいだった。 「失礼しま~す。」 そう声を掛けながらドアを開ける。 保健室の先生はいなくて、仕方がないからまた教室まで戻ると、近くに座る奴に頭痛薬を持っていないか聞いてみた。 生憎誰一人持っている奴はいなくて・・・・・。 そのまま我慢をしていたけど、帰るころには寒気もしてきて、本当に病気なんだと自覚する。 「大丈夫かよ。家まで送ってやろうか?」 長谷川が心配して言ってくれたけど、さすがにいい年して送られるのは恥ずかしい。 「大丈夫だって、一人で帰れるし。ありがとな、じゃあな。」 「気を付けろよ?!ちゃんと休んどけよ!」 「ああ、バイバイ。」 長谷川とは駅で別れて、そのまま自宅の方へと歩き出した。 プツ、プツ、、、、、 雑踏の中でクラクションを鳴らされ、振りむいたそこには、駐車場から出てきたらしい車の窓から顔を出す天野さんの姿が。 「今帰りか?」 「・・・・はい、、、、」 3メーターぐらい離れたところから大きな声で聞かれ、俺がだるそうに言うと、天野さんが手招きをして近くへ来いと合図をした。 仕方なく、俺は車の傍まで寄って行くと、少し屈んで窓から出した天野さんの顔を見る。 「なんだ、元気ないなぁ。昨日はあんなに元気そうだったのに・・・」 「なんか・・・風邪ひいたみたいで、頭痛くて。」 天野さんの顔を見ながら、俺はニッと笑って見せた。 この人にまで心配させるのは申し訳なくて......。 「熱あるのか?」 と、俺の首の後ろを掴むと、自分に引き寄せながら聞いてくる。 「え?」と驚きの声を上げるが、天野さんは、俺のおでこを自分の額に当てて熱を測っていた。 そんなの子供にすることなのに。と思ったけど、抵抗も出来なくてそのままにしていた。 「ちょっとあるみたいだな。乗ってけ。」 「え?・・・・車にですか?」 「そう、家は分かってるんだから送ってやるよ。」 そう言うが、歩いても15分くらいの所なのに、と思って躊躇していると、「早く早く。」と急かされてしまい乗る羽目になった。 「歩いて帰れるのに、すいません。」と謝るが、微笑む天野さんの顔を見たらホッとした。 助手席に座り、シートにからだを預けると、一気に安堵感が増して目を瞑る。 学校から今まで、痛いのを我慢していたのもあるし、電車が込んでいて疲れたのもあって、1分とたたないうちに俺は意識を飛ばして寝落ちしてしまった。

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