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第30話

川沿いの道を桂に貰った英語の単語帳を開きながら歩く。 土手に群生していた彼岸花は、あっという間に落ちてしまっていた。 見事に咲いた炎のような花も、散ってしまえば儚いもので、もともと葉のない植物は芯だけがひっそりと残っている。 そんな光景を横目に、試験最終日を迎えた俺は、いつになく緊張する。 桂に教えてもらったところが出たらいいのに・・・と思いながらも、試験が終わったら天野さんの家に呼ばれていて、そこも気になるところだった。 いつもはバカな話をしながら歩くこの道も、今日だけは違っていた。 - - -  3時間目、英語の試験が始まって、答案用紙に目をやると一瞬口元がニヤける。 桂が言っていた、ここは出るっていう所が、そっくりそのまま出ていて、心の中で桂に手を合わせた。 それからヒアリング。 これも、桂の流暢な英語を聞いていたからか、なんとなくわかった。 おまけに単語を覚えたおかげで、文法に不安はあっても聞かれている内容が分かって、答えも出せた。 自分でも手ごたえを感じつつ、カバンをかかえると教室を後にする。 今日は試験終わりで下校になっていて、家に戻ったら昼食を食べてから天野さんの店へ行く予定だった。 明日は休校日。 もしかしたら、泊ることになるかも・・・・。 母親は、急に仲良くなった俺たちに、首を傾げていた。 「天野さんに迷惑かけないでよね。大事なお客さんなんだから・・・。」 「分かってるって、おとなしくしてるからさ。あ、でも泊まっていいって言われたら泊まるよ。」 「・・・全く、こんな子供と遊びたいなんて、天野さんも友達いないのかしらねぇ・・・。」 少しだけ腑に落ちない様子の母親を後にして、俺は店へと向かった。 交差点に差し掛かると、少しだけ緊張する。 店のドアを開ける時、どんな顔をしたらいいんだろう・・・・。 着く時間をメールで知らせておいた俺を、ドアの前で天野さんが待っていてくれた。 「いらっしゃい。」 「こんにちは。」 互いに、少しだけ照れ笑いをしてから店の中へ入った。 「少しだけ用事を済ませてくるから、奥のテーブルで待ってて。」 そう言われ、言葉に甘えて奥へと行った。 スタッフはみんな忙しそうで、俺の顔を見てはニコリと笑ってくれるが、話しかけることはしてこない。 ココも3度目になると、少し環境に慣れてきた俺はあたりを見回した。 スタッフは10人程かな・・・。 それでも、これだけの店をあの若さでやっているなんて凄いと思う。 そんなに有名な美容師とも思えないし、なのにお客さんは平日でも多くて・・・。 天野さんは、あんまり仕事をしていそうにないんだけどな・・・・。 「お待たせ、行こうか。」 座ってキョロキョロする俺に声がかかると、立ち上がってついて行った。 「忙しそうなのに、オーナーが留守をしていいんですか?」 俺が気になって聞くが、「ははは、大丈夫だよぉ・・・。うちのスタッフは優秀だからね。それに、オレが選んだんだから、安心して任せなきゃ。」 そう言って笑った。 ひよっこの俺にはよく分からないけど、身内だけでやっているうちの商売とは違うって事かな・・・。なんて漠然と思っては感心した。 見た目はチャラチャラしてそうなのに、どうして経営出来ているんだろう・・・。 謎の多い人だけど、そこもこの人の魅力なのかな・・・。 1時間かけて前に来た一軒家へとたどり着く。 ここは、天野さんの実家だったらしい。 天野さんの両親は、海外に移住してしまい、老後はあちらで楽しく生活するそうだ。 今はそういう老人が増えているようで.....。 「じゃあ、先ずは一緒にシャワーでも浴びようか?」 「え?」 いきなり言われて焦る。 ここへ来たって事は、天野さんに身を任せるって事だけど、実際俺は女の子とも経験が無くて、変な話、自分でする時も指をしゃぶってるような変なヤツで・・・・身体が硬直する。 「ははは、そう硬くなるなって、俺に任せればいいんだからさ。・・・それに、今日は痛いことはしない。約束するよ。」 「は、・・・い。」 言われて、益々硬直する。だって、痛いってナニ? 俺はもたもたしながら服を脱いでいった。 先に俺の身体を流してくれると、やわらかなスポンジで全身を洗い出す。 「それ、自分で・・」と、スポンジを取ろうとしたが「いいから。」と言われてしまった。 本当に俺は突っ立っているだけで。 目の前の天野さんの裸を見て、なんだか変な感じになる。 陸上の合宿では、男連中と風呂やシャワーを浴びてもなんのエロさも感じなかったけど、こうして天野さんの程よい胸板や乳首を見たらエロい気持ちになった。 俺の全身に泡が行き渡ると、天野さんはスポンジを置いて素手で触ってきた。 「なんか、こういうのってクるよね。後ろから少年の身体を撫でまわすとか・・・」 そう言いながら、俺の背後から躰を密着して胸から腹のあたりを撫でている。 「ちょっと、くすぐったいです・・・けど。」 俺が言うと、天野さんはその手を下に下げてきた。 「あ・・・」 股間を掴んで揉まれたから、変な声が出てしまった俺だけど、恥ずかしくなってじっとしていた。 そのうち天野さんの指が、尻に回ってくると、割れ目の部分を何度もなぞり、言葉に言えないような変な感覚に襲われる。 「じゃあ、流すね。」 そう言って、泡をきれいに流してくれると、俺を風呂から出した。 「着替えは出して置いたやつを着て、何か飲んでちょっと待ってて。」 「はい・・・。」 身支度を整えて、冷蔵庫からコーラを出してゴクゴクと飲めば少しだけ落ち着く。 これから俺は、自分と向き合うんだ。 もう逃げたりしない。何があっても、先へ進まなきゃ・・・・・。

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