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第52話

 桂と俺・・・・・。 あれ以来、どうもうまくいかない。 柴田や長谷川の様な友人関係から、少し逸脱してしまったからか・・・・・。 互いに意識し過ぎなんだろうか・・・・・。 - - -  ついに大晦日を迎え、今年最後の日、天野さんからメールが来た。 美容室が9時に終わるから、その頃店においでと誘われる。 店のスタッフと年越し蕎麦を食べる事になっていて、俺も一緒に参加するようにと言われた。 天野さんが色々なイベントに俺を呼んでくれるから、スタッフの人たちとも親しくなれた気がする。 こんな高校生の俺が、あの大人の人たちに混じって話せる機会はそうそうない。 そういう意味では、凄く感謝している。 ただ、俺と天野さんの関係性がよく分からないままで・・・。 身体の関係があって、気持ちも惹かれている。それなのに、何処かでやっぱり線引きをしているんだ。 歳が離れているせいか、俺が子供過ぎるせいか・・・。 「じゃあ、行ってくるな。この飾りを渡しておけばいいんだよな。」 母親に聞くと、紙袋の中身を確認する。 「そう、お願いね。・・・あ、帰って来るの歳が明けてからでしょ?!鍵持って行ってよね。」 「うん、持ったよ。適当に帰って来るから、じゃあ、良い年を・・・なんちゃってな。」 天野さんは酒を飲むから、今夜はマンションに泊まるだろうし、俺にも泊まれって言いそうだ。 もし、時間があったら神社に初詣に行こうかな。 そんな事を勝手に思っていた俺は、意気揚々と美容室へと急いだ。 繁華街へと続く通りは賑わっていて、人通りも多く、普段見ないような若い連中もウロウロしている。 その間を縫うように、紙袋を持った俺が歩いていると、ガサッと袋の当たる音が。 よそ見をしていた俺が、手元の袋に目をやる。 袋の取っ手が片方ちぎれてしまい、じっと見る俺にどこからか手が伸びてきた。 「おい、痛ぇな。」 そう言って俺の腕を掴んだのは、革のライダースジャケットを着た男。 見ると、鼻と眉毛の所にピアスをしていて、耳にもジャラジャラとついていた。 一瞬俺は息を飲む。 「あ、・・・すいません。」 そう言って一応謝るが、こっちだって袋の取っ手をちぎられてるんだ。 男のズボンについた鎖の金具が引っかかったんだろうと思った。 仕方がないから両手で袋を抱えると、その場を去ろうとする。 「おい、ちょっと待てよ。」 尚も、ピアスの男が俺に絡んでくる。 - めんどくせぇな。 心の中でそう思ったが、急いでいたし穏便に済まそうと思った。 「・・・なんですか?俺、謝りましたよね。」 こんな高校生に絡んで、恥ずかしくないのかよ・・・。と思った俺に、男が口元を上げる。 「お前、キレーな顔してんじゃん。」 そういうと、顔を近づけてくるから気分が悪くなる。 俺の周りをぐるりと回って、ヘラヘラと笑っている。 「すいません、俺ちょっと行かなきゃいけないとこがあるんで、失礼します。」 男の身体を避けるように前へ歩き出すと、「ちょっと待てってば。」と言って、また後ろから腕を掴まれた。 - もう、何なんだよ・・・・コイツ。 腕を引き離そうと、からだを捻りながら歩く俺に、思いっきり顔を寄せると「こんなに髪の毛伸ばしちゃって、キレーな顔して、お前オカマ?」とタバコ臭い息を吐きかけられた。 - オカマ・・・・?! 「はぁ?!・・・・」 俺は、思わずカチンときた。 こんなヤローにオカマ呼ばわりされて、クサイ息吹きかけられて、今までで一番の屈辱。 「なに、どっち?やっぱ、掘られる方なんか?」 と、耳に入る言葉が気に障り、「ふざけんなよ。」と、こもる様に言ったが、尚も面白がって俺の髪を触りに来る。 「汚い手で触んな!!」 俺は思わず男を突き飛ばした。 「・・・ってぇ・・・・。なんだよオカマが・・・。」 「うっせぇ、黙れ!!触んなよ汚ねぇなぁ・・・!!」 「はあ?ふざけんな。」 「ふざけてんのはテメぇだろ。ジャラジャと付けやがって。テメぇがオカマだろうがっ!!」 俺たちが、通行量の多い舗道の真ん中で罵り合いを始める。 と、誰かが交番に通報したのか、向こうの方から制服の警官の姿が見えて、俺はおもわず走って逃げ出した。

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