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第57話 *

 感じるたびに桂の口元は緩み、白い歯が見えると俺の唇がそれを塞ぐ。 上唇を舐めてから食むと、「ン.....」と桂の声が鼻から抜け、薄目を開けると俺を見た。 絡みつくような視線。確認し合うと、ゆっくり目を閉じて舌を絡め合う。 あぁ........ これは、忘れもしないあの日の感触。ずっと俺の脳裏にしまい込んだものだった。 ん......ふっ....... ずっとこうしたかった。桂があんな事を言わなければ、俺はきっと自制が効かなかっただろう。 「これでチンコが勃ったらホモ・・・。」なんて言われてムキになったけど、実際今の俺はホモ丸出しだ。 桂の下腹の傷を注意しながらも、俺のものはすでにそそり立っていて、先走りが糸を引きながら擦れると二人の腹を濡らす。 「あぁ.......かつら.....、俺......。」 唇を離すと、息と一緒に声が洩れた。 少し気を静めようと一旦身体を離すが、「千早、......いいよ、千早の好きにして。.......いいから......。」と、桂が俺の目を覗きながら言った。 - まったく、これだから・・・・・・・・ いつもの桂の優しさに、俺はつけ込んでしまいそう。でも、今の桂には無理をさせたくない。 「桂・・・、お前経験ある?もちろん’女の子’とだけどさ。」と聞いてみる。 「・・・・あるよ。・・・中学2年の時いっこ上の先輩と。それに高1の時もな・・・。どっちも一度きりだったけどさ。」 「え?!・・・・・マジか・・・・・・・」 思いのほか早くてびっくり。あんなに近くにいたのに、全く気付かなかった。 でも、それを聞いて俺は覚悟を決めた。 「ちょっと待ってて・・・。」 そう言って布団から出ると、コートのポケットに手を入れて探し物を取り出す。 「何?!」 不思議そうに聞く桂に、俺はチューブを見せると、「これが無いと、男は入んないんだ。」と言った。 手にしたのは、ワセリンの入った容器で、花屋で水仕事をする俺はいつも持ち歩いていた。 手を拭いてそのままにしておくと指先が割れてしまい、絆創膏だらけになる。 それが嫌で、まめにワセリンを塗って保護していた。 男のくせに女々しいかもしれないけど、これは重宝するんだ。 髪の毛をセットする時ワックスの代わりにも使えるし、今夜のように潤滑剤の代わりにもなるんだから・・・。 チューブから手のひらに取り出すと、俺は自分の後ろに塗り付ける。 そんな姿を桂には見せたくないけど、布団の中でもぞもぞと指を出し入れすると、俺の息が荒くなってきた。 「千早・・・・気持ちいいの?」 「..............ん、...っん」 声を殺す様に解す俺に、「それ、オレがしてもいい?」と聞いてくる。 ん、んんっ....... 首を横に振るけど、桂の手が後ろに回ってくると、俺の指をなぞりながら窄まりに侵入してきた。 うっ、.............ん、 おもわず声が洩れ、片方の手で桂の肩を掴む。 そうして、そのまま唇を重ねると、意識は指の感触に集中した。 桂は初めてなのに、俺の肉壁を押し広げるように指を回すと、もう一本増やしてくる。 ヌチヌチ...という水音が激しくなり、更に奥深く指を侵入させると微妙に振動を与えてきて、俺の脳天はくらくらした。 っ、.......は、........っ 段々と俺の身体も馴染んできたのか、散々天野さんに開発された場所は、すぐさまあの感覚を呼び起こす。 もう、指では抑えきれなくて、もっと熱のある桂のものが欲しくなった。 「か、つら......俺、こっちは初めてだから......ゆっくりキテ......。」 そういうと、桂の雄に手を添えた。 桂のものも、オレ同様すぐに爆発しそうだった。 「うん、.........、痛かったら言って。」 俺が、シーツに貼りつくようにうつ伏せになると、桂はそっと俺の背後に身体を移した。 それから窄まりをつつくように、少しずつ侵入してくると、俺の腰を鷲づかみにする。 う........っ、......... 正直怖さもあったけど、何よりも桂とひとつになれる喜びの方が勝っていた。 身体を埋めるように、俺の中に入った桂はしばらくじっとしたままで・・・・・。 脈打つ心臓の鼓動と一緒に、自分の中に感じる桂の鼓動も高鳴っていた。 「暖かい......千早の中........」 そう言って、桂は俺の背中におでこを付けた。

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