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第74話
帰り道、外灯に照らされながら歩く二人の影が、ピッタリと寄り添う。
付かず離れずの微妙な距離を超え、しっかりと腰に手を回して歩けば、もう誰に見られてもいいと言う覚悟で・・・。
俺は桂の事を心から好きと言えるし、桂もきっと俺だけを見ていてくれる。
そんな確信があって、桂の家の方向に向かうと、玄関の横の塀の隙間に身体を入れた。
互いに見つめ合えば、どちらからともなく唇が触れる。
湿った空気が二人の息を余計に湿らせて。
ンチュッ、..................チュ、
何度もキスを交わし、頬に手を当てながら互いの瞳を確認する。
トロンとした瞳の奥で、熱く燃える情熱を確かめ合うけど、残念ながら帰る時間だ。
「.......はぁ、.......明日が休みなら良かったのにな。」
俺が桂の腰に手を回すと言った。
「日曜日ってあっという間だよな。でも、また時間のある時電話して。オレが千早の家に行ってもいいし・・・。」
「うん、そうだな。隣の部屋にアネキはいないし声が出ても平気かもな。」
そう言って桂の尻を揉むと、「バ~カ。そういう意味じゃないって。勉強教えに行くって事だよ。」と言われる。
「ああ、そっち、な!」
二人でゲラゲラ笑うと、自然に身体を離した。
「じゃあ、おやすみ。またな・・・。」
「うん。おやすみ・・・。」
チュッと、最後にキスを交わすと、俺たちはそれぞれの家に戻って行った。
その晩は、静かになった部屋の中で、天野さんたちの顔が浮かぶと変に顔がニヤケてしまった。
あの二人も同級生か。
天野さんたちも、今の俺や桂と同じように悩んだりした時代があったのかな。
あの、立花さんって人、結構面白そうな人だった。
オカマって言葉はあんまり好きじゃないけど、あの人は堂々としていたな・・・・・・。
どう見ても男なんだけど、本人的には満足しているんだよ。
あんなに付けまつげ付けなくたっていいのに・・・・・。
- まあ、でも、面白そうな人。
そんな事を考えているうちに、辺りはすっかり明るくなって鳥の声まで聞こえてきた。
いつも通りの朝を迎えれば、学生と会社員とでごった返す電車に揺られ馴染みの学校へと着く。
受験まであと半年・・・・・。
いいしれない緊張感が俺の背中を押す。
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