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第82話

 あれから1時間.........。 俺の意見とか気持ちとかを無視して、どんどん進められるモデルとしての役割。 結局、女性モデルと二人で撮影して、何十枚もの写真を撮られ、どれが載るのかは知らないけど正直マイッタ。 高校生の俺が、長髪のボサボサ髪をしているのを気に入るって、全く変な人たちだ。 俺自身、感覚だけで生きてる所があるけど、この人たちとは又違う気がする。 それに、写真の事はよく分からないし.................。 「ごめんね千早くん。疲れたよね?!良かったら何か食べに行こうか?」 天野さんは気遣ってくれるけど、俺は腹が減った事よりも、この状況が理解できていなくて戸惑ったままだった。 「あの、もう帰ってもいいんでしょうか?!・・・ご飯は家で食べるんで・・・。」 「あ、ああ、もちろんだよ。お使い頼まれて来て、こんな事になっちゃって・・・、ごめんな。」 「いえ、・・・まあいいですけど・・・。じゃあ、これで失礼します。」 「うん、気を付けてね。」 「はい・・・。」 ペコリと頭を下げると、俺は階段を降りて下の店から出て行った。 その時、エリコさんたちがニコニコと微笑んでくれたから、ちょっと恥ずかしくなったが、一応さよなら、と挨拶をして帰った。 家に戻ると、母親が遅かったわねぇ、と言ったが、さっきの事を説明してなんかの雑誌に載るらしいことだけ伝えた。 「うっそ!!千早が?・・・・・や~ねぇ・・・ちょっと鼻が高いかも。」 まんざらでもない様子の母親を見て可笑しくなった。男の俺が、モデルみたいな事をするのは気にならないんだな。 母親がこんなに喜ぶのなら、きっとアネキに伝えたら大騒ぎになるな。 きっと、何処の雑誌に載るのかとうるさく聞かれそうだし、アネキには黙っていようと思った。 しばらくは、特に何も変わり映えしない日々が続き、俺は学校と家の往復だけをしていた。 桂にも最近会えなくて・・・。 じいちゃんの退院が決まったとかで、家の中を改装する手伝いがあるとか。 半身が少しだけ不自由になって、廊下を歩くのに手すりが必要とか言っていた。そういう事まで、桂が率先してやっているから大変だと思う。でも、手伝わなくていいって言われたし、俺は受験勉強に集中しなきゃならない。 桂に教えてもらった事が生かされるように、俺も勉強に身を入れるしかなかった。 年が明ければ受験は目の前。 桂と同じ大学には行けないけど、また4年間は学生でいられる。 その間にやりたい事が実現できるようにしなくちゃ・・・。 勉強漬けの毎日を送っていた俺に、不思議な事が起こり始めたのは、その後しばらくしてからだった。

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