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第119話

 - - -  親に、捨てられた?!- - -  カレは問題発言をしておいて、あっけらかんとした顔でこちらを見る。 17歳の高校生を捨てる親なんか................ そう思って、何故か桂の高校時代を思い出す。 アイツの両親がどんな人かも知らない時に、俺は桂の事をそんな風に思った。 どちらからも、求められない子。 でも、実際は違って、離れて暮らしたのは桂の希望だったことが分かる。 それも、俺の傍に居たい為だった。 でも、このおーはらクンの場合は..........? 「17歳って、高2か?」 「いえ、2月生まれなんで、高3です。」 「ああ、そうか...........。しかしまあ、親の事、そんな風に言っていいのかな。知らない人は信じてしまうよ。」 真新しいカードをファイリングすると、カウンターに手を置いたままいうが、カレはニッコリ微笑むだけ。 向きを変えると、店内の商品を見て周った。 ひとつ一つを手に取ると、ゆっくり見始める。その姿は、本当に雑貨が好きなんだと思うが、可愛い顔のわりに、どこか寂しくも見えるのは、そんな話を聞いてしまったからなのか。 ここは、部外者が変につつくとロクな事が無い。 俺には関係ないし.......... 「買い付けは、いつ頃行かれますか?」 「え?............ぅん、そうだな、...........当分は無理かも。」 俺の言葉を聞くと、カレはカウンターに近付いて来た。 「もし、留守番がいなくて行けないっていうのなら、僕がここでアルバイトするのはどうです?別のショップで販売のバイトはやった事あるんで。」 「は、......何言ってんの?......そんな事出来る訳が.......。高校生に店任せるわけないって。せっかくだけどね。」 「...........やっぱり。ですよね?!.........」 変な子だ。 とても行儀がいいようで、そのくせ大人を小ばかにしているようなところもある。 「親に、.......」っていうのは、案外本当の事なのかもな。 「で?親に捨てられて、今住んでる所は祖父母の家、とか?」 俺が冗談で聞くと、「おじさんの家。」と言う。 「そうか、親戚の家なら良かったじゃないか。飯ぐらいは食わせてくれるだろうし。」 「.......そうですね。僕の学費を飲み代やパチンコに変えてる人ですけど、まあ、ご飯ぐらいはくれますから。」 「マジ?.........ちょっとしんどいね、その境遇。」 おーはらクンが、冷めた眼差しをする意味が分かった様な気がした。 大人は信用していないんだな。それでいて、ちゃんと大人に取り入る術を知っている。 「店長さんは、なんて名前ですか?」 「俺?.......小金井、(コガネイ)って言うんだ。」 「コガネイさん。.......じゃあ、また来ます。アルバイトの話は本気なんですけど、冬休みとか使ってもらえたら嬉しいな。」 「.......残念ながら、前ほど忙しくはないんだ。ちょっと休憩してるものだから。.......受験勉強もあるだろう、しっかり勉強すれば?」 「来年は、隣の駅にある美容学校に行きます。多分受かるんで。そしたらここでバイトしたいな........。」 そこは自信があるんだろう、案外成績もよさそうなタイプだし。 「そのころ、この店がまだあったらな。その時は考えてみるよ。」 俺は、何故かそんな事を言ってしまって、自分でも不思議だった。 突き放す事も出来たのに、まだお客さんだという意識があるからか.......。 「有難うございます。........また来ます。さよなら」 「ああ、...........また覗いて見て。」 店から出て行く姿を見送ると、入口の壁にもたれかかった。 ドアを背もたれにして、舗道を歩くおーはらクンの後ろ姿を眺める。 ああ、そうか...........髪の感じもだけど、後ろ姿が桂にそっくりなんだ。 歩き方も......... 人混みの中に消えて見えなくなるまで、ただぼんやりと眺めていた俺。 最後に桂を見送った時、強い日差しが邪魔をして、アイツの顔が見えないままだった。 今なら、こんなにハッキリ見えるっていうのに...............。 お前の顔を見るのが、アレで最後なんて思いたくはない。 突然帰って来て俺を驚かせてくれよ。 シャッター閉めたら、後ろにお前の姿があったらいいのに.....................。

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