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第129話
”しばらくの間おやすみします。新商品入荷までお待ちください”
店のシャッターを閉めると、再び貼り紙をした。
新商品、と書いたのは俺の希望でもあった。
いつか必ずここに立てる日が来る。そう信じて、今は少しだけ心を休ませたい。
桂がくれた指輪をはめて、俺は店を後にする。
- -
何日か経って、桂の親父さんから連絡があった。
その前に、アネキの方へメールをしていたそうだが、直に俺と話が出来ないんじゃないかと心配していたようで。
こうして話が出来る事をすごく喜んでくれた。
確かに、あのメールの後、俺の記憶も曖昧な部分がある。知らないうちに歩き回っていたようだし、その後もぼんやりしてばかり。
でも、桂から届けられた指輪が俺に力をくれた。
メッセージカードにあった様に、こうして指輪をかざすとアイツがその先にいるみたいな気がする。
離れていても、繋がっている。俺と桂の指には、見えない糸がずっと離れず繋がったまま。
もう決して途切れる事はない。
.............永遠に.....................。
『次の休みに日本へ戻ります。もちろん秀治の遺骨を持って.......。私の両親にも知らせなければと思うのですが、実はまだ連絡していないんです。身体の負担になってもいけないし.......。』
親父さんが絞り出すような声で話をすると、俺も「そうですね。おじいちゃんは、一度脳溢血になっているし.....」と答える。
せめて、電話ではなく直接顔を見て話す方がいいかと思った。
どちらにしても、悲しい事実を伝えなければいけないが。
『千早くんは大丈夫ですか?少し落ち着きましたか?』
「.........本当に、少しだけですけど......大丈夫です。有難うございます。お父さんの方こそ、カナダと行ったり来たりでお疲れでしょう。身体はいかがですか?」
『私は、もともとじっとしていられない性分なんで、大丈夫ですよ。秀治の事は本当に苦しかった。でも、見つかっただけでも...』
そういうと言葉が途切れる。
「友田さん、.......いまだに見つかっていませんね。姉も心を痛めていますが、表面的には気丈に振舞っています。」
『.......本当に、残念です。死んだと分かるのも辛いが、未だ行方不明というのは........気持ちの踏ん切りも付けようがないでしょうし。』
親父さんの言うように、どうしようもない気持ちをどこにぶつければいいのか分からないままで。
俺なんかよりもっと辛いはずだった。
「俺で力になれる事は、何でもしてやりたいと思います。桂さんも、俺に何でも言ってくださいね。」
『有難う........。では、また近くなったら連絡しますので、お願いします。』
「はい、お気をつけて。」
こうして言葉に表すと、少しだけ冷静になれる気がする。
桂の遺骨が帰って来る。
会いたいような会いたくないような..........。
でも、ちゃんと受け止めなければ........。
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