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第135話

 「その人が’桂さん’ですか。メガネかけて真面目そう.........。小金井さんとはタイプが違うなぁ。」 おーはら君がテレビ台の横に目をやると、桂の写真を見て言ったので、俺もそちらに顔を向ける。 縁側に座って撮った写真が見つかって、写真立てに入れるとその前に小ぶりの花瓶を置いた。 そこにはカラフルな花が数本。 本当は菊とか、そういう花がいいんだろうけど、俺は赤や黄色の元気な色が桂には似合っていると思って。 三日に一度、実家の花屋からもらってくる。タダでもらう代わりに配達の手伝いをすることもあるが、母親も余分に持たせてくれたりして、みんなどこかで桂を忍んでいるんだ。 「俺と違って、桂は頭もいいしとにかく真面目だった。色々教えてもらったよ。」 そう言っておーはら君を見ると、テーブルの上の食器を片付けながら俺を見る。 「小金井さん、ゲイだって言ってましたけど、この桂さんもそうなんですか?」 「...........いや、........桂は違うな。ちゃんと女の子と付き合えてたみたいだし。でも、.........分からないや。」 おーはら君の質問に答えようとして、ふと、さっきの事が頭に浮かんだ。 「そういや、お前はどうなんだよ。男とあんな事出来るって......お前もゲイなの?」 少し小さな声で聞いてみたが、おーはら君はうっすらと笑みを浮かべただけだった。 この、なんとも言えない含みのある笑顔が、逆に怖いんだよなぁ......。それに比べたら、高校生の時の俺って、かなりウブだったと思う。 「ま、いいけどさ。何だって.......、おーはら君はおーはら君だもんな。」 「ジュン、でいいですよ。僕の名前、大原 純。..........大抵は大原って呼び捨てですけど、小金井さんにはジュンって呼んでほしい。」 「.................かわいい名前だな。まあ、俺のチハヤには負けるけどな。」 そう言って笑うと、おーはら君もニッコリと微笑んだ。 - - -  その夜、おーはら君がシャワーを浴びている間に、居間に布団を敷いてやったが、この家に独りでいる事に慣れてしまった俺は、なんだか違和感を覚えた。ひと月以上も落ち込んで暮らしていた俺が、こうして高校生なんかの為に甲斐甲斐しく布団を敷くって...。 しかも、少し浮き足立つような。別に変な気は起こさないが、誰かのために何かしてやるなんて思ってもみなかった。 「有難うございました。サッパリして気持ちよかったです。」 おーはら君が、そう言って頭を拭きながら入ってくるとお辞儀をする。 こういう所は行儀がいいんだよな.........。 「学校行く前に、家に戻らなくていいのか?教科書とか、着替えとか。」 俺が聞くと、「大丈夫です。教科書は学校のロッカーの中だし、着替えはこのデイパックに入っているから。」という。 「お前、着替えとか持ち歩いてんのか?」 大きなデイパックは、高校生が通学に持つにはそぐわないと思っていたんだ。これはバックパッカーが持つようなもので。 「はい、僕の荷物はこれだけです。あ、この間買ったTシャツも入ってますよ。」と言って中身をゴソゴソと広げ出した。 「分かった、出さなくていいから。.........なんとなく、お前の生活環境が目に浮かぶ。こうやって、誰かの家に泊めてもらっていたんだろう?!」俺が言うと、おーはら君は「時々、ですけどね。」と笑った。 - もう、なんと言っていいのか............ 今どきの高校生がみんなこうなのか、それとも、おーはら君だけなのか.........。 分からなくなって、俺は早々に切り上げるとシャワーを浴びに風呂場へと向かう。 同居のおじさんが、どんな人なのかは知らないが、俺ですらジェネレーションギャップを感じてしまうんだ。 更に上の年代なら、もっと理解に苦しむのかもな。アイツの母親が戻って来なかったらどうするんだろうか......。 .........俺も、どうしようかな.............

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