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第141話

「謙、お前何歳だっけ?!」 縁側に座っている謙に、チョコレートの箱を出してやりながら聞いたが、「10歳だよ。小金井くんは何歳?」と聞かれて言葉に詰まった。 「.....もうすぐ29歳。って、俺の歳はどうでもいいんだよ。謙は将来、その花のお茶を作るのか?」 「うん、でもねぇ、難しいかもしれない。だから、輸入とかして、そういうお茶を売ったり飲ませてあげたりしたいな。」 チョコレートを旨そうに頬張る姿は確かに10歳だけど、輸入とか。 そんな言葉を知っているんだな......。 俺が一人で感心していると、「僕がお母さんを助けなきゃいけないしさ。」と、ポツリと言った。 「.......謙、.......」 こんな小さな子供でも、母親を気遣うんだな。 そう思ったら、意識の奥深くに仕舞いこんだ悲しみが噴き出して、目頭が熱くなった。 「謙、じゃあ、俺が店を作るから、お前はそこを守ってくれるか?お母さんと一緒に。」 あぐらをかいた膝の上に、謙を抱きかかえると聞いてみる。 「うん、いいよ。そこで花のお茶を出してもいいの?」 「ああ、いいとも。謙が好きな物を出していい。お母さんが喜ぶものとか、じいちゃんやばあちゃんが大好きな物とかな。」 抱えた謙の顔を覗きこむ様に話すと、謙も振り返って俺に笑顔をくれる。 - 花のお茶ね............. なんとなくだけど、謙の言葉で俺の頭の中に一軒の店が出来上がる。 色とりどりの花に囲まれた店内。 そこで出される花から作ったお茶。......そこはこれから勉強しなくちゃいけないな.......。 カフェのような、........でも、あくまでもメインは花。 う~ん、なかなか難しいけど、飲食店の事ならはじめママに聞けるし.......。 俺は、謙が言っている花のお茶ってやつに興味が湧いて、謙の知っている事を聞いてみようと、アネキから連絡が来るまでしゃべっていた。 自分の昼ご飯を食べ忘れていると、バイトから戻ってきたおーはらに叱られる。 「まったく、子供と一緒になって遊んでるから......。少し早めに晩御飯にしますか。」 なんて、ちょっと立場が逆転したみたいになった。 まるで俺の方が子供みたいな言われ方。もう、30前だっていうのに..........。 まあ、俺も昔から性格は変わっていないんだ。 何かに興味が湧くと、そっちに集中してしまう。周りが見えなくなる事もあったけど、流石に歳を重ねたらそんな事も少なくて。 でも、謙やアネキの為になる事なら、力になってやりたかった。 そんな事を考えた矢先、実家の親父から驚きの話を聞かされる。 アネキと話したらしい、大事な話ってヤツを俺が知ったのは翌日の事だった。

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