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第9話 安らぎの時間。

帰りの車内で匠は独り言の様に呟いた。 『明日、児童福祉相談所で朱里の知能検査をしてもらわなきゃな。。』 「そうだね。。3人で行こう。」 『。。千景君も一緒に行ってくれるの?』 「俺は朱里のママで、匠さんの嫁だよ?まさか俺だけ仲間外れにするつもり?」 『えっ?千景君は俺の嫁なの?』 「えっ?駄目?ママは良くて嫁は駄目かぁ〜。じゃあ今は恋人で我慢してあげるよ。」 千景は匠に少しでも元気なってもらいたくてわざと冗談めかして言った。 『あ。そうゆう事ではなくて。。』 「やだなぁ。本気にしちゃった?冗談だって!でも朱里のママってのは本気だよ。」 『あ。うん。そうだよね。冗談だよね。。』 朱里と一緒に後部座席に座っていた俺は、自分が口にした言葉で匠さんが寂しそうな顔をしている事に気が付かなかった。 帰宅してから、匠さんは俺達の前で少し不自然な程明るく振る舞っていた。 不安な気持ちを朱里に気付かれたくないんだろうな。。 俺は匠さんと一緒に朱里と目一杯遊んだ。 彼女はとても楽しそうで俺達も幸せな気持ちになった。 遊び疲れたのか朱里は早々にベッドに入り眠ってしまった。 リビングに戻ると匠さんが書類に目を落としていた。 「匠さん。疲れたでしょ?明日も朝から出かけるから今日は早めに寝た方が。。」 『ああ。そうだね。。』 匠さん独りで居たいのかな。。 「じゃあ、俺寝ますね。おやすみなさい。」 千景が寝室に向かって歩きだすと、不意に背中から抱きしめられた。 えっ? 今、俺抱きしめられてる? 『ごめん。。少しだけこのままでいさせて。』 匠は千景の背中で泣いていた。 俺を抱きしめる力が強まり、匠は身体の震えを必死に抑えている様だった。 千景は振り返って匠を強く抱き締め返した。 「大丈夫。大丈夫だよ。俺が居るから、貴方の傍に居るから。。」 『。。千景君。何もしないから、今夜一緒に寝てくれる?』 「勿論!じゃあ手を繋いで一緒に寝ちゃったりします?」 『ふふっ。それは良いね。』 2人は寝室へ行き、手を繋いで一緒に眠りについた。 千景の隣で眠る匠の表情はとても安らいでいた。。 翌朝朝食を取り終えると、3人は朱里の知能検査を受ける為、児童福祉相談所へ向かった。 昨日と違い、検査が終わるまで、保護者は別室で待機との事だった。 匠と千景は昨日よりも幾分平静さを取り戻したが、不安な気持ちはぬぐいきれなかった。。

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