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私の両親②
「なんか微妙な戦果だったねー、関西遠征。」
「そうだなー、監督とか超ピリピリしてっからおっかねーのなんの。」
智裕は東京を本拠地にするプロ野球チームの球団職員として働いていて、現在は一軍選手のトレーナーをしている。そのため、チームに帯同するので多いときで月の半分以上家に帰れないこともある。
私はこんな生活には慣れているし、智裕もマメに連絡するから寂しいとは思わない。
「智裕ー。」
「んー?」
「パパとはどれくらいご無沙汰なの?」
「………どストレートですね、茉莉さん。」
智裕は顔を真っ赤にして私の方を見た。そんな彼の反応が愉快でニヤニヤしてしまう。
智裕は私のパパの夫でもある。厳密に言えば事実婚なのだが、自治体の「パートナーシップ宣誓制度」を利用して、私が小学生くらいの時にパパと結婚した。
私も1歳の頃から智裕と一緒にいるので、パパと智裕が一緒にいると言うのは当たり前の光景だった。
私自身は、LGBTへの理解を深めようという時勢や道徳教育のおかげで両親のことでいじめや差別などに遭遇したことは一切ない。
むしろ高校生になって腐女子仲間が出来てからは、「なにそのリアルBLたまらん!」と羨ましがられる。たまに2人を盗撮しては仲間と萌えを共有している。
そして私が腐女子だと知っている智裕には、こうしてよく夜の営みについて語ったり(というかからかったり)相談に乗ったりしている。
「2週間以上ヤッてないでしょ?」
「ぐ……3週間以上確定してる。」
「だろーねー…昨日からパパのそわそわ具合、キャンプから帰ってくるレベルだったし。」
「マジで⁉︎」
「もー昨日の朝から『まーちゃん、明日智裕くん帰ってくるよ。』『智裕くんの方が早いかな?』『智裕くんの好きなお酒買っておかなきゃね。』って目にハートマークだもん。なにあの生き物マジで可愛すぎるんだけど。」
「おお……やべー、想像しただけでやばいぞ……。」
智裕は少々前かがみになりかけている。おいやめろ(義理だけど)娘の前だぞ。
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